サイコシリアル【5】
「戌亥、お前は酷く勘違いしているぞ」
この連鎖を断ち切らねばならない。
「お前が口を挟むんじゃねーよ、涙雫」
九紫戌亥が殺意を剥き出しに、僕に答えた。
答えるということは、少なからず会話を出来るということだ。
「そんなこと分かってるよ。でもな、これは戌亥、お前の為じゃなく九紫の為に言わなければならないんだよ」
それが今の僕の使命でもあるから。
「僕は事の真相については詳しく分からないが、お前は、妹のことが守りたかったんだろ? 現に、百歩譲ったとしても、それでもお前は妹の『立ち位置』しか守れてないんだよ。殺しをしなくてもいい立ち位置を確立しただけなんだよ」
「ちっ・・・・・・何が言いてーんだよ」
「いいか、戌亥。守るってのは、そういうことじゃない。体を、何かを守っても、その人の心ごと守らなきゃ意味ねーだろ。守ったとお前が思っても、九紫がそう思わなきゃ意味がない。それはただの自分よがりな行動だ。勘違い野郎だ。ナルシスト野郎の愚行だよ。救った気になっただけの敗者に過ぎない」
「お前には関係ねーだろうが! さっきから出しゃばりやがって!」
「関係ない? 本当にそう思ってるなら滑稽だな。嘲笑してやりたいよ、マジで。関係あるに決まってんだろ。友達の九紫が悲しんでるんだ。戯贈が悲しませられたんだ。僕が口を出すのに、これ以上の理由なんていらないだろ?」
本当のことを言えば、九紫戌亥の気持ちも分からない訳ではない。
妹の為に壊す。創る。それは最もな話だ。
けれども、やり方に問題がある。
作品名:サイコシリアル【5】 作家名:たし