サイコシリアル【5】
「どうして、どうしてなの? お兄ちゃん。一族を壊す必要なんてないじゃな
い。一族に誇りを持っていたお兄ちゃんは何処に行っちゃったの?」
「・・・・・・許せねーんだよ。政府が俺たちを利用していたことに。親父がそれに則っていたことに。俺たちに対する冒涜じゃねーか、中立を思想とする組織が、政府にいいように使われていたんだからな。もし仮にそれを許せたとしても、枝苑、お前たちをも利用していたことは、騙していたことだけは許せねーんだよ。だったら壊すしかねぇじゃねーか。創りあげるしかねぇじゃねーか。『殺し』という行為に疑問を抱き、決して『殺し』をしなかったお前達が暮らせる所を創りあげるしかねぇじゃねーか!」
「でも・・・・・・だからといってお兄ちゃんには、お兄ちゃんだけにはこんなことし
てほしくなかった」
「俺はな、枝苑。正義の味方でもヒーローでもねー。こういうやり方しか出来ねーんだよ。お前達が『殺し』をしなくて済む世界を創れるなら、俺が壊すしかねーんだよ。もう後戻りは出来ねーんだ」
結局、九紫戌亥が一族を壊す理由は九紫を始めとする、妹達の為だったということだろうか。
決して『殺し』をしなかったということは、九紫も『殺し』を『殺す』殺し屋だったのだろうか。
あくまでこれは、仮定の話だが。
九紫の偽体を作り、死を創りあげたということは、九紫を一族から解放するため。政府の目から逃れさせる為。そして何よりも、守りたかったのだろうか。九紫戌亥は、妹達を。
『お前だって、戯贈の為なら世界を壊すだろ?』
この言葉の真理は、ここにあるのだろうか。
妹達の為に世界を壊す。
そう言い換えることが出来る。
僕は、この会話に口を挟むべきではない。
けれども、挟まずにはいられない。
作品名:サイコシリアル【5】 作家名:たし