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Minimum Bout Act.01

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 手前の椅子を引き寄せて座り、キーボードに触れる。ブウンと静かなモーター音がすると画面が立ち上がり、ルーズは両手の指を組んでパキパキと顔の前で鳴らした。
「さて、と……やりますか」
 ルーズの眼鏡に目の前の画面が反射する。“ELEN・READ”という名前を元に、今朝ルーズ達を訪れた依頼人のIDを探るのだ。
 人探しの仕事は危険を伴う。依頼主がIDを持っていて身分が保障されていなければ、カッツ達は仕事を受けない。偽造IDを使うヤツもたまにいるが、世界条約でID偽造は重罪とされ、国によっては死刑になる場合もある。
 そういった連中を警察に通報し引き渡す事でも彼らは収入を得ていた。
 今回の依頼主であるエレンという女は、IDによるとベニーランドの隣国、ドルクバの人間だ。年齢は20歳で、自分の恋人を捜して欲しいというのが依頼だった。
 恋人の名はパスト・ヤーセン。同じドルクバ人で、エレンの父親が経営する機械工場で集配部の主任をしている22歳。2週間前から無断欠勤をしているという。自分からいなくなった可能性も現段階では否定出来ないが、エレンはパストが自分の意志で黙ってどこかへ行くとは考えられないと強く言っていた。警察へ行っても相手にしてもらえず、色々と調べ回ってここへ辿り着いたらしい。
 MBの噂はあちこちで知られているが、この廃ビルまで自力で辿り着く依頼人は少ない。基本的には仲介屋を通してメールで依頼を受け、依頼人に会う前にこちらで相手の素性を調べてから会いに出向く。
「ちょっと引っかかるのよね」
 そう呟いてルーズはどんどんとキーボードを叩いて行く。
 ピクリ……
 一瞬眉が動く。
 そして横に置いてあるインカムを装着すると、スイッチを入れた。
『おう、どうした?』
 呼び出し音の後にヘッドホンから聞こえて来たカッツの声に、ルーズは画面上に赤く表示された文を目で追いながら言った。
「カッツ、この仕事、ちょっとヤバいかも」
『何だ?』
「依頼人、エレン・リードは10年前に死んでるわ」
 ほんの少し間が開く。
『どういうことだ?』
「10年前の大型旅客機の墜落事故で死亡ってなってる」
『んじゃああのガキは誰なんだよ?』
 新しい画面を開いてさらに情報を呼び出していると、別の名前がヒットした。
「同じドルクバにエレン・リードという女性が一人いる」
作品名:Minimum Bout Act.01 作家名:迫タイラ