Minimum Bout Act.01
「あのなあ、俺達の仕事は人探し。エレンが組織と繋がってようが麻薬売りさばいてようが、男に貢いでようが知ったこっちゃねーの。後は警察に任せとけばいいんだって」
そして応接室へと戻って行ってしまった。
「カッツの言う通りだ。考えても仕方ない。お前はカッツの船で帰る準備をしといてくれ」
『分かったわ。それじゃあ後で』
会話を終えると、シンも応接室へと入った。
「リードさん、エレンのDNA検査をする許可を頂けますか?」
唐突に言われ、ガイオは惚けたようにトレインを見た。
「どういう事ですか?」
「エレンは別人である可能性が出て来ました。ですからあなたとの親子関係を証明するため、あなたとエレンのDNAを提供して頂きたい」
「な、何を……」
ガイオがエレンへと視線を移そうとした瞬間だった。
「がはっ!?」
突然エレンが口から泡を吹き出し、両腕で首を締め付けて立ち上がった。
「ううううっ! ああっ!?」
「何だ? どうした!? おい!!」
ガクガクと激しく痙攣したかと思うと、エレンは突如糸の切れた人形のようにぐにゃりと床に倒れた。そしてピクリとも動かなくなってしまった。
トレインとカッツがエレンに駆け寄る。
大きく見開いた目は真っ赤に充血し、鼻、口、耳から血液の混じった赤い泡が流れている。
直ぐさま脈を取ると、トレインはぐっと目をつぶって歯を食いしばり、首を左右に振った。
「ーーー死んでる」
「し……どうしてっ!? エレン? エレンっ!!」
「触るな!!」
ガイオが取り乱し、エレンを抱きかかえようと腕を伸ばすのを遮ると、カッツはインカムのスイッチを押した。
「ルーズ。エレン・リードが死んだ。多分殺された。偽造IDを作っていたエレンと、こっちのエレンのこれまでの動向をすぐに調べ上げろ、それと母親の生前の事も全部だ。エレンの為に作っていた口座の金の流れ、カシズーへ行く前後の通信記録、交友関係。全部だ!」
乱暴に怒鳴ると、部下に連絡を取るトレインの横で舌打ちをする。
「なんなんだよ、ったく! どうなってんだ!?」
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死んだエレン・リードの解剖の結果、体内型ID情報から10年前に航空機事故で死亡したと思われていた“ノイア・ウォルシュ”という少女だと言う事が判明した。
作品名:Minimum Bout Act.01 作家名:迫タイラ