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Minimum Bout Act.01

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『ええ、思ったよりすんなり行ってね。まず殺されたエレン・リードだけど、裏では結構名の知られた偽造屋だったみたいね。写真のICチップのシリアルナンバーを解析出来た分だけでも、ここ数年で摘発された偽造IDの相当数にヒットしたわ』
「はあ、よく捕まらなかったな」
『組織が間に入ってたようね。エレンは元々ドルクバが機械産業で財を成す発端となった“エンド大気生成システム”の開発技術者よ。ID偽造なんてお手の物だわ』
「それは随分な大物だったんだな……だが組織が絡んでるとして、エレンを殺した時に何故ICチップは処分しなかったんだ?」
『必要無いからでしょ? どうせ中身しかいらないんだし、組織もいらなくなった廃チップをエレンが後生大事に持ってるだなんて思わなかったんじゃないかしら』
 普通ヤミで使用された物はヤミで売りさばかれる。ICチップのようなものは一般人には使い道が無いため、手に入れる事は簡単だが、後は焼却処分するか飾るくらいしか行く末はない。ドルクバのような機械の街ならではの代物と言ってもいいだろう。
「だがどうして組織はエレンを殺した?」
『……』
 そこでルーズは黙ってしまった。
 シンは無言になったルーズの顔を思い浮かべ、初めてルーズに会った時の出来事を回想した。


 あれは確か3年前の雨の日だった。
 シンとカッツが組織絡みのターゲットを追っている時、地球の近くにある別の惑星でなかなか捕まらない相手に手をこまねいていた。
 激しい銃弾がシン達に向けて乱射される中、殺傷能力のある武装はしない、という妙なポリシーを持つシン達は防戦一方だった。
 持っている武器と言えば目くらまし用の照光弾、電流弾、ペイント弾と緊急時用の信号弾という、子どものサバイバルごっこ並の装備だ。
 ターゲットはたった1人。
 雨音をうまく利用し、カッツが男の背後に回り込むという作戦に出たが失敗に終わる。
 素早いターゲットがカッツを躱し、小型宇宙船に乗り込もうとした瞬間だった。妙な空気を裂く様な音と共に、遥か上空からその宇宙船のフロント目がけて何かが落ちて来た。
 激しい衝撃音と同時に真っ赤な鮮血が飛び散り、何かがぶつかった勢いでバランスを崩し宇宙船から落ちたターゲットをシンが取り押さえた。
 次にシンが顔を上げると、目の前でカッツが血まみれの女を抱えていた。
作品名:Minimum Bout Act.01 作家名:迫タイラ