Minimum Bout Act.01
『今ドルクバに着いたわ。エレン・リードが殺されてたんですって?』
ルーズからの連絡で、ドルクバに到着したとの事だった。
「ああ、今トレインと一緒にリード社に向かってる。そっちはどうだった?」
『リード社はいたって普通の会社ね。年商は世界的に見ても高くて、各先進国の上場株式会社との取引も多い優良会社よ。社長のガイオ・リードは2代目で、かなりのやり手のようね。彼が社長になってからのこの10年で飛躍的に業績が伸びてる』
「10年……」
どうもこの10年前というキーワードが気になる。カッツはシンを見て頷く。
「ちょっと調べてもらいたい事があるんだ。シンが今からお前の端末に情報を送るから、そいつを急ぎで調べてくれ」
シンは先ほど殺されていたエレンの詳しい殺害状況と、トレインに借りたICチップの写真を自分のノート型端末からルーズへ送った。
『……この殺されたエレン・リードと組織の繋がりを調べればいいのね?』
「ああ、頼む」
『何か分かったらすぐ連絡するわ』
「分かった」
ルーズとの連絡を切ると、丁度巨大なリード社の工場が姿を現した。
黒と灰色で組み上げられたその工場は、夕日を背にカッツ達を飲み込むかのように入り口をオレンジ色に開けてそびえ立っていた。
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外観とは裏腹に、工場内はやけに清潔感に溢れていた。
床はクリーム色のセルロイドで光っていて、働く人間もさっぱりとした作業着に明るい表情で実に楽しそうに仕事をしている。
工場の入り口にいた警官から社長のガイオ・リードには話しが伝わっていたらしく、すぐに応接室に通された。
「リードさん、お嬢さんは今どちらに?」
まずはトレインがガイオと話しをする。
ガイオは革張りのソファーに浅く腰掛け、目の前に座るトレインとカッツ、その横に立つシンに茶を進めた。
「お茶でもどうぞ。娘なら自宅におりますが、娘と同じ名前の女性が殺されたとか……一体どういうことでしょうか? 娘に何か関係あると?」
あの小生意気なエレンと違い、父親のガイオは随分と常識的な男だった。
カッツはトレインの足をテーブルの下でコツンと蹴る。
「それを調べているんです……今朝、お嬢さんが人探しの依頼をしに、こいつの所へやって来たそうです」
そう言ってとなりのカッツを紹介した。それを受けてカッツが口を開く。
作品名:Minimum Bout Act.01 作家名:迫タイラ