オリーブの枝
ここはどこだ?やけに暑く、足場が悪い。洞窟の中のようだが、どこか様子がおかしい。光は全く差し込まず、耳を澄ましてみると、ア、アアアア、アアアアアアア、と人間か何かの生き物のうめき声のようなものが聞こえてくる。
あぁ地獄か、やはりそうか。死んじまったのか、俺。そう確信し、歩き出す。辺りは広く、歩いてもほとんど景色が変わらない。ふと、立ち止まる。
人の死体だ。痩せ細った体で、首と体は分離していて、顔は髪で隠れていた。それを見るやいなや、腰を抜かし、後退りした。それが、あの記憶を思い起こさせたからだ。
はぁはぁ、と息が荒くなる。後ろに下がっていると、何かにぶつかった。誰か……いる。おそるおそる後ろを振り返ってみた。
その瞬間、目の前が真っ暗になった。突然の出来事に混乱して、立ち上がった。何だ、どうしたんだ、誰に言うのでもなく叫んだ。不安で体が震えだす。
人殺し!
はっきりそう聞こえた。後ろのほうからだ。やめろ、やめてくれ!前へ走り出した。
人殺し!
前からも聞こえてきた。耳を塞ぎ、右へ左へと必死で逃げた。
人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!
その声はどんどん大きくなって、襲い掛かってきた。
やめろ、やめてくれ!仕方がなかったんだ、ああするしかなかったんだ!
人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!
さらに声は大きくなり、取り囲まれた。どこからともなく襲ってくる声に攻め立てられ、蹲ってしまった。
人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!
うわあああああああああああああああああああああ!!やめてくれーーー!!!
叫び声をあげ、あたりかまわず暴れた。得体の知れぬ何かを全てぶち壊したかった。