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オリーブの枝

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 裸の王様を読んでから、考え方が変わった。子供でいられるうちに好きなことをやろう、大人になると好きなことができない。といっても、暮らしぶりが今までと変わるわけではなかった。自分のやっていることを否定するわけでもない。ただ、少し人生観が変わっただけだ。さらに、この頃は他にも人生観の変わる出来事があった。児童養護施設に新しい子供が来た。彼女の名前は、芦田麻美。良い意味でも悪い意味でも彼女が始めての友達だ。
「はじめまして、私芦田麻美よ。よろしく」
 彼女は笑顔で私に声を掛けてきた。
「はじめまして」
 ぼそっと私は返した。
「かわいいわね、あなた。名前は?」
「鈴木花子」
「じゃあ、花ちゃんだね!」
「そうだね」
「ふふっ」
 彼女はずっとニコニコと笑っていた。これが彼女との出会いだ。何のへんてつもなければ、面白みもないし、ウケを狙うこともなく、普通の出会いだが、私には新鮮だった。
 麻美は、私と同い年だが、私よりいろいろなことを知っていたし、明るくて可愛らしい子だった。麻美とは学校でもクラスが一緒だったので、いつも会っていた。麻美は私と違い、施設でも学校でも人気者だった。誰とでも分け隔てなく話し、私とも仲良くしてくれた。麻美のおかげで、クラスに馴染むこともできた。
「花ちゃん、一緒に帰ろ!」
「いいよ」
 いつも一緒に登下校をしていた。1人で帰ることが多かったから、これも新鮮だった。
「学校には慣れてきた?」
「うん、毎日楽しいよ!」
「それならよかったね。麻美ちゃん人気があるよね、特に男子から」
「そうでもないよー」
 えへへと笑う。
「ねぇねぇ、花ちゃんは誰か好きな子とかいるの?」
 何の脈絡もなく聞かれた。麻美は少しマセてるところがあった。
「え?い、いや別に……」
「えぇー、そうなの?花ちゃんかわいいし、絶対誰か好きな人いるよ」
「そうかなぁ、別に興味ないかな。施設だとみんな女子ばっかりだし、そっちのほうに慣れてるから、あんまり意識したことないなぁ」
 ずっと施設暮らしで、施設には女子しかいないから、ほとんど男子と話したことがない。だから男子のことを気に掛けることがなかった。
「そういうもんかなー」
 うーんと腕を組む。
「じゃあ、また後でね」
 施設でも2人は一緒にいることが多かった。消灯時間まで、お互いの部屋でお喋りをしていた。
「それでね、それでね!」
「ははっ」
「ねぇ、すごいでしょ?」
「うん……ふぁああぁ」
 大きく欠伸をする。ついでに両手を伸ばす。
「花ちゃんって色白だよねー、細身だし」
「え、そうかな?」
 その時、確か私は白のワンピースを着ていた。
「わぁー、すごいすべすべしてる」
 腕を触りながら言う。軽い感じではなく、べったり感触を確かめるように触ってきた。
「くすぐったいよ、麻美ちゃん……」
「あ、ごめんね」
 ぱっと手を離す。
「もう、消灯時間だから行くね」
「ほんとだ、またね」
 この時はまったく何とも思わなかったけど、今思えばこの頃から少し変だったよね。

作品名:オリーブの枝 作家名:ちゅん