オリーブの枝
この件が評判になって、一層私は孤立した。この頃の私は何かというとかーっとなって、いらいらしていた。それを口で表現することは出来なかった。だから、たまに爆発すると、そのたびに暴れた。何であんなに荒れてたんだろう?学校でも同じだ。小学校に通い始めたが、そこでもあまりうまくいかなかった。孤児ってだけでみんな目の色を変えてる。みんな気にくわない奴に見えた。だから、徹底的に嫌ってやった。子供って単純だし、一度そう思い込むとなかなか修正がきかなかった。あの頃にもっと綺麗な目で世界を見ていればよかったね。まだ濁ってなかったのに。ずっと本読んだり、音楽を聞いてた。これは1人でも出来ることだからね。今でもそう。最初は絵本から入って、だんだんとちゃんとした物語の本を読むようになった。
裸の王様――。
この頃に読んだ本でとても印象に残っている本だ。初めて読んだとき、子供ながら衝撃を受けたのを今でも覚えている。新しい服が大好きな王様の元に、2人組の詐欺師が布織職人としてやって来る。彼らは馬鹿や自分にふさわしくない仕事をしている者には見えない不思議な布地を織る事が出来るという。王様は大喜びで注文する。仕事場に出来栄えを見に行った時、目の前にあるはずの布地が王様の目には見えない。王様はうろたえるが、家来たちの手前、本当の事は言えず、見えもしない布地を褒めるしかない。家来は家来で、自分には見えないものとは言い出せず、同じように衣装を褒める。王様は見えもしない衣装を身にまといパレードに臨む。見物人も馬鹿と思われてはいけないと同じように衣装を誉めるが、その中の小さな子供の1人が、「王様は裸だよ!」と叫んだ。ついにみなが「王様は裸だ」と叫ぶなか王様一行はただただパレードを続けた。
子供だけが王様の言うことに意見を言った。他の大人は王様に逆らえなかったり、建前を気にして自分の意見を言わなかった。大人になると、いろいろと面倒だ。見える世界が広がって、知識をたくさん蓄えるのは、良いこともあるけど、悪いことのほうが多いようだ。世の中の道理を早く知ると、ろくなことがないというのはまさにそういうことだ。私は大人になって、他人に迎合して生きるのは嫌だ。その当時にそこまで考えてたかどうかは覚えてないけど、少なくても、子供のままでいたいと思った。