オリーブの枝
「そう、それがものすごくいい!」
「男の人ってわからない」
今度は冷めた眼で見ている。
「性的嗜好というのは人それぞれだからね。性欲は誰にでもあるし」
「そういうものなの?」
「そうさ、鳩子にだってあるだろ?」
「わからない」
「あるよ。男より女のほうが性欲が強いらしいしね」
「それは聞いたことある。男の人の性感が性器に集中しているのに対して、女の人は体のあらゆるところ、耳や首、ひじや手の平、指、髪にもあるらしい」
「へぇそうなんだ、やっぱ女は敏感なんだ」
「あと、女の人が快感から通常の状態に落ち着くまでの時間は、男の人の何倍もあるんだって」
「それはすげぇな。ずっとびんびんなわけだ」
「でも、それは性欲が強いとはまた別の話のような。どちらかと言えば、『女の人のほうが性をより楽しめる身体に出来ている』っていうほうが正しいと思う」
「まぁそうかもしれないけど、ずいぶんと詳しいな」
にやぁと忠司は笑った。
「べ、別にいいじゃない」
またそっぽを向く。
「ませてますなぁー」
「うるさいわね!別にいいじゃない!目が見えなくなってから特に興味を持つようになっただけよ」
「なるほど。盲目じゃ処理は難しそうだな」
「ん、まぁ、ね」
頭を掻きながら言う。
「女の性欲って何で湧くの?」
「一概に言えないわよ。男の人と違って、不純な感じじゃない。女の人は繊細なんだから」
「だろうね、男は単純だもん」
うんうんと頷きながら言った。
「何を言ってるんだか」
「てか、いつまでその姿でいるの?正直ドキドキするんだが」
「ドキドキしてるんだぁ」
「うん、やばいですね」
「……もっと見たい?」
「……今日はずいぶんとサービスがいいみたいだな」
「でも私ばっかりじゃ、不公平でしょ」
「俺にどうしろと?」
「そうねぇ、じゃあキスしてみてよ」
「していいの?」
「逆にそっちこそいいの?」
「キスぐらいなら……」
鳩子はこちらを向き、口角を上げて、唇を差し出した。忠司はゆっくりと近づく。そして唇を近づける。