オリーブの枝
「志倉さん……」
忠司は彼女の胸で泣いていた。茜、と名前を呼び続けながら。
「あっ」
忠司は目を覚ました。再び顔が涙でぐちゃぐちゃになっていた。はっと我にかえる。あれは、夢だったのだろうか。
「すっきりした?」
「……うん、一応。久しぶりに茜に会えた」
「そう、それはよかったわね」
彼女は落ち着いてそう言った。まるで子供を寝かしつける母親のように。
「あぁ、ごめんね。いつまでもこんな……」
忠司は彼女の体から離れた。
「いいよ、別に」
相変わらず淡々とした話し方だな、と忠司は思った。
「もう時間だ、ほんと今日はありがとう」
忠司は満面の笑みを浮かべて、彼女に言った。彼女は、それを聞いて、少し恥ずかしそうに
「……どういたしまして」と呟いた。
忠司は立ち上がった。そして、彼女の手を掴んで立たせた。いつものように部屋まで連れて行った。
「ばいばい」
彼女は小さく手を振る。
「うん、ばいばい」
忠司も返した。
その夜、忠司はまた夢を見た。今度はいつも見ている夢で、また忠司は殺されかけていた。でも少し違った。いつもは、死ぬ直前に茜の顔を見るところで夢が終わって、茜の顔を確認できないでいたが、今日はその続きがあった。
「これでおあいこだね……仲直りしよっか。会いに来てくれたもんね。もう、いいよ」
そう言って、茜は忠司に笑いかけた。