ライドガール
リウはカズートが一番嫌うことを言った。イシャーマの金と力を振り回しているとなじった。彼が純粋な好意で助けてくれようとしていることはよくよくわかっていながら、それを拒絶した。彼の気持ちを冷たく踏みにじったのはリウだった。
なのに、カズートはリウを許してくれている。
よかったよ、と自分の牧の馬の一位よりもリウの二位を喜んでくれている。
カズートはやっぱり変わっていない。一年見なかったあいだに、綿の風防布から絹のスカーフに変えてはいても、中身はリウが知っているカズートのままだ。
彼の前に出て行きたかった。黙って聞いてれば勝手なことばかり、と思いきり舌を突き出してやりたかった。きっとカズートは驚いて、たじろいで、それでもすぐに気を取り直して、実際そうだろうがと言い返すだろう。そしてその後ぶっきらぼうに、やったなと祝福してくれるだろう。
「……」
リウはますます膝を抱え込んで、さらに体を縮める。
まだだ――リウは自分に言い聞かせる。まだカズートには届かない。自分の力でそこまで行って、そうしたらやっとリウは対等の立場だと自分を思える。彼と向き合える。彼にちゃんと謝ることができる。また前のように話をする資格があると、胸を張って彼に会える。
馬を気づかうカズートの声を聞きながら、リウはずっと膝に顔を埋めていた。
しばらく馬の様子を確かめてから厩舎を出たカズートを見送って、そろそろと立ち上がったときには、すっかり体は強ばっていた。