ブローディア冬
「じゃあもしもの話」
「ん?」
ストーブをつけて部屋の中が暖まるまで、布団を顎の下までピッタリ着込んでじっとしていた。
冬の朝の空気っていうのはなんでこんなに張り詰めてんだろう。それはもしかしたら、旅館みたいな木の天井に俺がただ緊張しているだけかもしれない。
石間は窓の方を見て、つまりやっぱり俺から顔を背けて布団の中で丸まっていた。
おはようと呟きあって。
「もしも」
「うん」
「ルイさんが木野のこと好きだったらどうする」
「え?」
ルイは俺のことを弟みたいに可愛がってくれてる。好き、だと思う。どうもしない。
「多分石間のことだって好きになってくれたよ」
「そりゃどーも……」
石間はあくびをして俺の方にゴロンと転がった。
急に至近距離に現れる。
「うわっ」
「木野」
「なに、石間」
「俺も木野のこと好きなんだよ」
「俺も石間が好きだ」
「うん」
ぎゅっと指を繋ぐ。
もうちょっと寝ようかなと思って目を閉じたら、石間がキスしてきた。ばあちゃんちにいるのに。二階からばあちゃんとルイが起きて来た音がするのに。
「ルイにヤキモチやいてるの?」
「違うけど」
「普通じゃなかったらこんな布団俺らに渡さないよ」
「いや、俺を試してんだ。ぜってー」
寝乱れた金髪が鼻に当たった。ルイのブロンドよりも堅そうな石間の金髪。なんか、エッチくさいと思った。
「俺たち、初夜はなにもなかったね」
「ああ。…………っえ?」
「やっぱり俺は試されてる」
石間が繋いだ手を離そうとするのをとめることも出来ず、俺はまた眠ってしまった。