ブローディア冬
宿題を終わらせて、スキーも何度か石間と練習しに行った。ホントはルイと3人で行く予定だったんだけど、捻挫してからは車の運転もままならない様子で。
「そろそろ帰ちゃうんだね」
「そうだなあ、また夏休みに来るよ」
「ウン、待てるヨ」
「あ、その前にゴールデンウイークかな」
「ハハハ、そんなに出歩いてたら、イシマが寂しがる」
「えっ……あ……そうかな」
ルイはフッと笑って、そのベッドサイドにいる俺の頭に大きな手を伸ばした。
「んー」
「フフ、シンはネコみたい」
ルイの手のひらが、髪の毛を掻き混ぜる。ゆっくりと撫ぜて、その手が頬へ滑り降りた。安心する、ルイの大きな手。
「ルイは、ゴールデンレトリバー」
「いいね。じゃあイシマはなに?」
「えー? なんかルイ、最近、石間石間って言うね」
「ソーかもね。アレだ、キタキツネ」
「るーるるるるー」
「るーるるるるー」
ガチャッと扉が開いて、ルイの手が俺から離れた。ノックがなかったからびっくりして二人して扉を見る。
「木野、ちょっと郵便局つきあっ……」
「イシマだ」
「石間だ……」
笑い出した俺たちを見て、理由を知らない石間はぶつくさ言いながら出て行った。玄関で待ってるって。
「ホントに来ちゃった、石間」
「タイミング良すぎだね。ホラはやく追わなきゃ」
うん。そう言ってルイを振り返って布団を直していると、「仲良くね」そう言う優しい表情を見つけてしまって、なんだか恥ずかしくなってしまった。
はやく石間を追わなくっちゃいけない。