生きている人死んだ人
死んでしまった人に会うにはどうしたらいいか。
そんなことを、彼は五年間ずっと考えている。
答えのない問題を、飽きもせずずっと考えている。
私は、いつか由真だけではなく彼まで死んでしまうのではないかと、五年間ずっと怯えて過ごしている。由真に続きシュウ君まで死んでしまったら、私はきっと耐えられないだろう。
由真は私にとって一番の友人だった。いや、彼女が死んで五年経った今でも、私は彼女を一番の友人だと思っている。この先何年生きたとしても、私は由真以上の友人を得ることはできないだろう。それを悲しいと思う一方で、誇らしいとも考えている。
私と由真とシュウ君は、高校時代に出会った。何となく気が合って、三人でよくつるんでいた。その間に私はシュウ君を好きになり、シュウ君は由真を好きになり、由真は誰も好きにならなかった。もしかしたら、私が気付かなかっただけで由真は誰かを好きになっていたのかもしれない。今となってはもう突き止めようのない話だ。
由真は彼をヒイラギ君と呼んだ。それが彼の愛称だった。私は彼をシュウ君と呼んだ。誰もが彼をヒイラギと呼ぶ中で、私だけがシュウ君と呼んでいた。しかしそんなあざといアプローチに、シュウ君はなんの感情も抱かなかったようだった。
由真を、憎いと思ったこともある。彼女は私の一番の友人であり、同時に一番の恋敵でもあった。
でも、だからって彼女が死んで嬉しいなんてことはない。それは彼女が死んだ時も、今も変わらない。出来ることなら私だって由真に会いたい。彼女に会うことができたなら、なんで死んだんだと詰って、大好きだと抱きしめたい。彼女が生きている間に言えなかったことや、できなかったことを全てやってやりたい。
こんなに早く別れが来ると、いったい誰が予期しただろう。
十代の頃、死、というものはどこか遠い存在だった。由真が死んで初めて、意識したほどだった。あれから数年たって、死は常に私の傍らに潜んでいるものだとわかった。あと数年経ったら、今以上に痛感することだろう。
最近、由真のことを良く思い出す。高校時代の頃のこと。私と、由真と、シュウくんの思い出。あの頃が一番、楽しかった。片思いは辛かったけど、でも、そんなもの今と比べたらなんてこともないことだった。
死んだ人間にはどうやったって会うことができない。例え私やシュウ君が死んだとしても、死んだ人間に会うことはできないのだ。
シュウ君だって本当はわかっているはずだ。
だから彼は今も生きている。
死んでしまいたいと、本当は思っているのだろうけど。
作品名:生きている人死んだ人 作家名:ラック