最強の足跡
「斎藤が倒れたってかぁ!?オイオイ、ヤバいじゃないか!!」
豪快に永倉が言う。
「ジャアイヨイヨ俺ノバンダナ」
不気味な顔で沖田がニヤリと笑う。
「隊長クラス二人一組に行動するべきですな。局長。」
伊藤がインテリに言う。山南もこれに同意する。
近藤は高らかに言い放った。
「これより私は土方を副将とし、隊を預かる。全員続け。沖田は、山南を連れて先発しろ。セイヤ及び、レナを叩け。」
山南は伝統ある道場で敵なしと呼ばれ、沖田は斎藤を越えるだろう、仁商連のホープである。仁商連は本格的な戦争の準備を進めていた。
「セイヤ、エリが立ってるよ。」
そう言いながら、セイヤのエリを直すのはレナである。
「セイヤ、私、お洋服がほしい。」
おねだりするのはレナである。セイヤは頭痛を覚えた。しかも無駄金に対するものではなく、レナに逆らえない自分に対してである。
なぜ、レナに逆らえないのか?
理由はわからない。セイヤがお子様なだけである。仁商連と本格的に戦い始めたあとは仁商連を名乗る輩を血眼になって探しては捕まえ、役所に突き出し、懸賞を荒稼ぎしていた。なので遊び放題である。
「なあ、ほとんどの服は実家に送りつけるのやめたら?」
セイヤが渋く言う。
「オシャレは女の子にとっては真剣なの。お金もあるんだし、好きな服はちゃんと買わなきゃ!」
レナの熱弁に何度逆らったか数知れない。しかし、レナはセイヤが逆らえない、なにかを持っている。これだけは間違いない。
「あ!このリングいいな〜セイヤ!」
まただ。たかが指輪になにを熱くなっているやら、セイヤにはわかりかねる。さらには自分の分まで買わされた。
同じ指輪をはめるのがそんなに大事なのか?セイヤの疑問はやがて愚問になる。
「レナ。指輪をつけて殴るとよく効くって知ってるか?」
セイヤの質問は言い終わらないうちにレナの鉄拳による回答を得た。
「レナ…なんで…」
伸びてしまうセイヤ。レナはセイヤを引きずって次の街に向かう。
その時だ。沖田と山南がセイヤ達の前に現れた。
「オマエラカ。斎藤ヲヤッタノハ…」
ただならぬ殺気…レナはセイヤをすばやく起こした。
「あなた達はやりすぎました。覚悟はいいですね?」
山南が冷たい口調で言う。静かな敬語だが眼光のするどさはまさに突き刺さるような視線だった。
先に動いたのは沖田である。
あまりにも早い。
狙いはレナだ。
レナは黄色眼を開いて応戦する。
互角だ。スピードだけなら斎藤以上だ。
剣の舞を高速化したようにガキガキと打ち鳴らす。
セイヤは山南にぶつかる。
北辰一刀流の師範こと山南は軽やかにセイヤの攻撃をさばいて行く。
セイヤは先祖代々に伝わる六気を山南にぶつけてみた。
山南の剣先がよくみえる。
先読みして山南の顔面に攻撃が入った!
打つべし打つべし。セイヤの勝ちだ。
レナはどうだろう?姿は見えない。
だが、心配は無用だ。レナがいない。
正確には見えないと言うべきであろう。
沖田は全身に傷ついて膝をついている。
沖田の後頭部にレナの攻撃が入り、KO。
この知らせは近藤に直通した。
「沖田、山南の二名が負傷。命だけは取り留めました!」
仁商連はいよいよピンチである。沖田が敗れるとは、近藤直下の精鋭でさえ、難しい相手であることに他ならない。
「松平さんになんて説明すりゃいいんだ…。」
近藤の代表としての悲鳴である。
残るは近藤、土方、永倉の三名になった。
「この三人と俺の部隊で一気に倒す。沖田、山南を打ち破るレベルだ。気を引き締めろ。」
近藤の激で仁商連は最後の戦いに備えた。
「セイヤ。あーんして。」
セイヤ達は現在食事中である。レナがホクホクな雰囲気でセイヤに食べさせてい
る。
セイヤ、なんとうらやましいと先走ってはいけない。セイヤが食べさせられてい
るのはカツオ出汁につけたパスタなのだ。
うまいはずがない。が、レナの見えない力によって無理やり食べさせられている
のだ。
「おいしい?」
レナの微笑みが恐ろしさを駆り立てる。
「イーッ、イーッ!」
セイヤは限界に近いようだ。
「今日は渋い顔してるよ?セイヤ?」
レナの鋭い洞察である。
「いやいや、なんでもないよ。おいしいよパスタ☆イーッ!イーッ!」
せめてキムチパスタにしてほしいセイヤであった。
店を出ると数十人に囲まれた。近藤ら仁商連である。
セイヤ達は誰もいない荒野まで逃げた。街中で戦うわけにもいかない。
「往生際が悪いぞ。賊徒セイヤ!」
土方が挑発する。しかし、この挑発がいけなかった。
セイヤは六気を放出した。
レナは黄色眼を開いた。
黄色眼と六気に兵卒が耐えられない。
永倉がセイヤを攻撃。
セイヤは軽やかにかわす。
セイヤのカウンターが決まり、永倉撃沈。
土方がレナに攻撃。
しかしなんなく手玉に取られ撃沈。
近藤がセイヤに攻撃。
セイヤに当たる前にレナが妨害。
セイヤが渾身の力で近藤を撃沈。
すんなり終わってしまった。
増援が来襲した。
沖田、斎藤、松原の三名だ。
斎藤の攻撃はセイヤを容赦なく攻め込む。六気にもひるまないあたり、今作最強の敵キャラだ。
レナは沖田と松原を一手に引きつける。誰か一人がセイヤを狙えばたちまちセイヤは死ぬだろう。
沖田の攻撃をレナは飛び上がってかわし、松原に一撃を見舞う。
松原は撃沈した。残るは沖田だ。
セイヤの方はやはり斎藤が優勢である。だが、セイヤはまだ平気だろう。
レナが沖田を倒すのは時間の問題だ。しかし、起き上がった永倉がレナを攻撃する。
レナは両手に剣を構えた。
「リナ式二刀流の奥義よ。閃!」
レナの姿が消えた。永倉、沖田の全身に傷が現れた。
レナは斎藤に向かうことはできない。セイヤを巻き込む可能性があるからだ。
セイヤがやはり間を詰めると斎藤はスッと引く。
一定の距離がたもたれたまま、斎藤のペースが崩せない。
レナが切りかかる。
ついにレナは沖田、永倉を倒したのだ。
「セイヤ!離れてっ!」
またあれをやる気だ。
セイヤすら影を追うのが精一杯の『閃』をやる気だ。
セイヤは距離を取るが後方に強い殺気があらわれた。
武田、井上、谷の三人だ。
セイヤもレナも仁商連の隊長達との戦いで消耗している。
よって、中堅クラスでも苦戦は免れない。
そんなセイヤのピンチに気づかないレナでは無いが、斎藤の力の前にレナもまた苦戦を強いられた。
「閃!」
レナはまた消えるが、斎藤はピシャリとレナを捕まえてしまった。
レナの剣と斎藤の剣がガシイと音を立てる。
こちらはまだ長引きそうだ。
さて、くたびれているセイヤに残酷に立ちはだかる三人、武田、井上、谷は一斉にセイヤに切りかかった。
谷が斬りつける。
セイヤははねのけ、蹴りを加える。
武田が斬りつけると、セイヤは腕を捕まえて投げ飛ばす。
井上の猛襲を全力でかわす。
今のところセイヤは攻撃できていない。
さらに井上は追ってくる。
セイヤは六気を高めて、井上を迎え撃った。
途中、谷が加わり、武田も加わる。セイヤの方はピンチだが、レナもまた劣勢である。
セイヤはレナと合流することにした。
三人に背中を向けて、まっしぐらに斎藤に切りかかる。
極めて重い、衝撃波を伴う一撃が斎藤に直撃した。斎藤もこれには膝をついた。
作品名:最強の足跡 作家名:peacementhol