最強の足跡
「仁商連である。セイヤ、レナがいれば差し出せ。さもなくばこのアカデミーに血の雨を降らせるぞ。」
谷が啖呵を切った。
アカデミーの生徒は誰一人動じない。むしろ殺気を二人にぶつけまくっている。
「甘くみるなよ?チンピラぁ。」
アカデミーの生徒は意外に凶暴だった。
「報告!谷、井上をチボーンにて回収。重体です!」
近藤のもとに入った報告によると、セイヤを探しだす前にケガをしたらしい。
これで6番以下は全滅だ。
「俺が行く。松平にどやされちゃかなわない。ついて来い!土方っ!」
いきり立ったのは近藤である。仁商連の絶対不敗、近藤がついに動く…前に待ったが入った。
「私が松原を連れてセイヤとやらをしょっぴいてきましょう。6番隊を預かる私と5番隊の松原で必ずや…。」
得意げに話すのは武田だ。
「本当に大丈夫なんだな?」
話す近藤の顔は青筋がたっている。仁商連はかなり追い込まれつつあるようだ。
さて、セイヤとレナの二人は仁商連の襲撃(?)に気がつかないままに術を覚えていく。
「セイヤ、才能無いね。私のほうが大きいよ。」
レナが自慢げに言う。セイヤは確かに負けていた。
「なんかチマチマして苦手なんだよ…。」
セイヤの言い訳は見苦しい。だが事実、魔術はレナの方が明らかに上である。
「ファイヤー!」
セイヤとレナが術をぶつけ合う。勝ったのはレナだ。セイヤは黒こげである。
術の研究はアカデミー生が協力してくれる。二人は魔術を実戦投入するべくさらに研究を重ねた。
そのころ、武田と松原はアカデミーにたどり着いた。
「そこの優等生よ、待ちたまえ。私達はセイヤ君の知り合いだ。セイヤ君がここにいると聞いて立ち寄ったのだが、セイヤ君はいらっしゃるかな?」
武田が丁寧に話すと、生徒はすんなり教えてくれた。
セイヤは体育館で、魔術を織り交ぜた、新スタイルを研究しているらしい。
仁商連の武田と松原は当然戦うわけだが結果は仁商連にはますます気の毒な結末を迎える。
「セイヤちゃん!あたしよ!あたし。タケちゃんよおおぉ」
武田が知り合いのフリをして、セイヤに抱きつく。
「ちょっと、この女だれよ?あたし意外のコに興味があr…」
言い終わる前にセイヤの拳が武田の顔を潰す。
「セイヤ!女の子になにするのっ!?ってかこの女はだれっ!?」
レナがセイヤに言う。青々としたヒゲを見てもレナは女だと信じきっている。
「これのどこが女じゃっ!」
セイヤと松原は仲良く絶叫した。そして、松原は武田を引っ張ってその場をあとにした。
「だめだ!ライバルの女はいいとして、私のカンペキな女装を見抜く。おそるべし、セイヤ!」
武田が悔しがった。
「いや、カンペキなわけないし…」
松原が身も蓋もないことを言う。
「よし…あの女も厄介だからあの二人をケンカさせるぞ。」
武田は二通の手紙を作った。
『愛するレナへ。
はじめまして。私は観柳斎。
将来君の旦那さんになる者だ。いやはや、君を始めて見た時から張り裂けそうな胸の中君に会いたくて、会えなくて……』
もう一通は
『☆ぁぃするせぃゃさま☆
久しぶりに会えて嬉しかったわ。変な女と何をしてるか知らないけどあなたとあたしの赤い糸は切れないわよ。いつだってあたしはあなたを…旦那さまのことしか……』
レナ宛ての手紙をセイヤに、セイヤ宛ての手紙をレナの荷物に仕込んだ。明日か明後日には二人は戦争状態になるであろう。
翌朝。
武田と松原の泊まっている宿にセイヤとレナは押しかけた。
二人の息はぴったりに武田を締め上げた。
「…なんのつもりだ?」
武田が声を絞り出す。
「レナにはなぁ…」
「セイヤにはねぇ…」
二人の声が重なる。
「あんな手紙が来るわけないだろっ!(でしょっ!)」
「報告!武田、松原の二名をチボーンの宿場町にて回収。危篤です。」
もはや仁商連も楽観はできなくなった。情報を受け取ったのは斎藤だった。斎藤は近藤には言わなかった。
「やっと、俺用のエサが出た。セイヤ…レナ…コロシテヤル。」
今作最強の戦士がついにセイヤを狙いだした。
そのころ、セイヤ達はオーシャンにいた。食の町オーシャンにてセイヤもレナも食事を楽しんでいた。
「やっぱりキムチスパゲティに限るわ。美味しい!」
二人で4人前のキムチスパゲティを注文し、食べ続けているのだ。二人はなぜかスパゲティを箸で食べる。誰に習うわけでもなく、先祖代々こうしてきたのだ。特にレナの家庭では先祖代々キムチスパゲティこそ至上の料理として好んでいた。
「なんで箸なんだ?」
フォークでウッカリ巻きすぎたセイヤはすでに十回はまき直している。セイヤはご先祖様のように口が大きくないので、チョロチョロとしか食べられない。
「うちはいつも箸だよ?おかしい?」
レナが堂々と言い放つ。堂々と言われると自分が間違えているような錯覚を起こす。セイヤはついつい箸に持ち替えた。
その時である。窓ガラスが割れ、賊が侵入した。
従業員も客もその場で切り捨て、真っ直ぐにセイヤを狙う。
セイヤは応戦した。狭いレストランだが敵は容赦ない。
「仁商連の斎藤だぁ!ここにいるやつぁ皆殺しだ。ヒャハハ!」
四番隊の隊長であり、仁商連随一の剣士である。
ガツガツとセイヤを追い込む。
レナが黙っているはずが無い。切りかかる。
斎藤は振り向きもせず足を後ろに突き出し、レナをはじく。
その間もセイヤに反撃の糸口がつかめない。
斎藤の攻撃は雨を剣で防ぐように難しい。
レナが魔法を使った。
斎藤はジャンプしてセイヤを盾にする。
セイヤは魔法を斎藤の方にはじく。
斎藤は剣で魔法を切り刻む。
そのままセイヤを捉えに行く。
レナが妨害。
2対1の位置関係ができた。
セイヤとレナの攻撃を一手に受ける。
先ほどに比べればラクだが、斎藤の隙が見えない。
レストランにはもうこの3人しかいない。
机も椅子も切り刻まれている。
その時だ。レナに異変がおきた。
黄色く輝く目…黄色眼である。黄色眼は千人に一人の才能である。
「黄色眼の女かぁ?こりゃあ沖田の野郎でも手ぇ焼くかもなぁ!」
斎藤は歓喜と期待をこめて言い放つ。
レナの姿が消えた。
斎藤の全身にピシリ、ピシリと傷がつく。
セイヤにも影を追うのが精いっぱいである。
斎藤は急所だけはしっかりかばいながら応戦する。
黄色眼は千人に一人の才能で開花すれば数段上の相手を軽々倒せる。セイヤには無い力だ。その代わりにセイヤには代々伝わる六気がある。六気とは闘気、覇気、殺気、鉄壁、見切り、切り返しによる気で、いずれか一つ使えれば最強クラスとされ、2つ以上を使えれば天才の中の天才である。
六気をすべて、しかも同時に使えたのは最強夫婦とその子にして世界を作ったライラだけである。セイヤはそれ以来の使い手である。
レナは斎藤を徐々に追い詰める。
斎藤はまだまだ弱る気配が無い。
そこにセイヤが入りこんだ。
レナが間を開け、セイヤが斎藤をガシガシと押して行く。
斎藤も徐々に動きが鈍りだした。
もうレストランはおろか、街並みも跡形も無い。
セイヤの剣が斎藤をついに捕まえた。
とうとう斎藤は倒れた。
斎藤が倒れたという話は即座に仁商連に広がった。仁商連最強と言われる斎藤が敗れたのだ。無理も無い。
作品名:最強の足跡 作家名:peacementhol