サイコシリアル[4]
「おーおー。怖がるなよ、涙雫。別に俺の邪魔をしないんだったら殺しはしねーよ。もし、邪魔するってんなら、邪魔した時に殺してやっからよ。俺の邪魔をする、それがお前殺す理由だ」
身の毛もよだつ寒気がした。
斬島や霞ヶ窪を経験しようとも、それでも寒気がする。
斬島や霞ヶ窪はサイコパスの分類だ。善悪の区別がつかないサイコパス。
人を殺す、ということを悪だと感じない悪。
しかし、九紫戌亥の場合は違う。
善悪の区別が出来て尚、人を殺すのだ。
理性の上で、思考した上で殺すのだ。
殺しを生業とする殺し遣い。
ただならぬ圧力を感じるのも言うまでもない。
「未知とは恐怖と言い換えることが出来るよな」
不意に、九紫戌亥が言った。
「どういうことだ?」
「お前は理解力があるんじゃねーのかよ」
「生憎、ピンチにならないとただの平凡な高校生なんでね」
「はは。ならお前は今ピンチという状況じゃないってか。大したもんだ」
「今殺されないならピンチにならないだろ」
「そりゃそうだわな。要するにあれだよ、あれ。未知とは無知だ。知らないということは恐怖と同意義だろ? 未知に対する知識というのは、所詮仮定に過ぎない。仮定ということは無知に等しい。だから未知は恐怖なんだよ。現にお前は未知なる俺に恐怖している」
九紫戌亥は、けらけらと笑いだした。さもこの状況を楽しむかのように。絶対的優位を楽しむかのように、絶対王者を感じさせるかのように笑った。
「そんな、びびりな涙雫君に大出血サービスをしてやんよ。優位程つまらねーもんはねーからな。ある程度、拮抗してないと勝負はつまらないからな。別に俺は策士でも勝負師でもねーからよ」
「何が言いたい」
知りたいけど、知りたくのない事実。
それを、九紫戌亥は言おうとしているのが目に見える。
仮定が確定に変わる瞬間。
「戯贈の親を殺したのは俺だってことだよ」
そういうことだ。
作品名:サイコシリアル[4] 作家名:たし