サイコシリアル[4]
「へー。良く分かったな。俺が戌亥ってことを」
的中したくない予想が的中したような感覚だった。
だって僕は、これで殺し遣いと相対していることが証明されてしまったのだから。
「状況から判断したまでだよ。霞ヶ窪に因縁がある、殺し屋といったら、お前くらいだろうからな」
「もし、違う名前言ってたらウケたんだけどな」
九紫戌亥はそう言って、けらけらと笑い始めた。別に嫌味な笑いとかではなく、世間話をしているかのような笑い。
「その時はその時さ」
「ま、そりゃそうだろうな。人生なんて行き当たりばったりだ。人生にレールなんてねぇんだしな。あーそうだ。お前さ、俺の事お前とか呼ぶなよ。俺には戌亥って名前があるんだからよ」
「こんな時にふざけてる場合かよ」
なんなんだよ、こいつの余裕は。
余裕がありすぎて、怖い。
「ふざけてなんかねーよ。勘違いするな。俺はいつも真面目だよ。他人がふざけてるとかふざけてないとか、そんなの個人の考え方だろ。お前を基準にしたら俺はふざけてるかもしれないけど、俺からしたら俺はふざけていない。むしろ、俺からしたら、ふざけているのはお前だよ、涙雫」
「僕の何がふざけているんだ?」
「ふざけているというよりも、お遊戯かな。これも俺個人の感じ方の問題なんだけどな。要するにあれだ、人様の事情に首を勝手に突っ込んできたお前にふざけてるとか言われる筋合いはねーんだよ」
九紫戌亥は、声を凄める訳でもなく淡々と言った。
何故、知っているのか。
何故、見通しているのか僕には分からなかった。
それこそが恐怖だ。
作品名:サイコシリアル[4] 作家名:たし