サイコシリアル[4]
口に出すことは出来ないから、僕は『ごめん』とだけ脳内で呟いた。
ナイフが頸動脈に食い込んでいく感覚がした。
まだ食い込んでいないが、この時間軸が狂った世界でもそう時間はかからないだろう。
その時には、紛れもなく僕は死ぬんだ。
首から真っ赤な血を吹き出し、倒れ込み、血を垂れ流し、痙攣し、惨めに、残虐に、無惨に、残酷に、残忍に、残骸となるんだろう。
ただの物として見られるんだろうか。
死亡推定時刻だとか、司法解剖だとか、法律とかいう枠に囚われるんだろう。
ははは、皆同じじゃないか。人間は人間が作ったものに囚われて、生き延びて。すがるように生き延びて。それで自由を求める、自由を主張してるなんで寝言だ。人間は、人間として産まれた時点で自由というものとは皆無なのだから。
そういった意味では僕は死して自由を完成させるのだろう。
でも、戯贈がいない世界なんて自由であっても不自由だ。
不十分で不充分だ。
そんな世界で自由を得るなら、自由なんていらない。見たくもないし、感じたくもない。
結局の所、僕は臆病者なんだ。
臆病だから思考し、現実から逃れようと持論を展開し、馬鹿みたいな御託を並べている。
僕は正直、怖い。死が、とてつもなく怖い。死を知らないから。死に無知だから。
死が未知だから。
怖い。
でもやっぱり、どんなことを考えようと。
もっと。
もっと。
もっと。
戯贈と過ごしたかった。
気づくのが遅すぎるな、マジで。
御愁傷様、涙雫もとい僕。
作品名:サイコシリアル[4] 作家名:たし