サイコシリアル[4]
九紫戌亥が、円卓テーブルに乗り上がり言った。
僕を見下しながら、卑下するかのように囁いた。
まるで妹を想うばかりに、人を殺めてしまった兄のように。囁いた。
「げほっ・・・・・・馬鹿じゃ・・・・・・ねぇか」
横隔膜の伸縮活動が狂い、なかなか言葉を紡ぎ出せないがらも僕は必死に声を
震わす、いや、奮わせた。
「戯贈の為なら・・・・・・はぁはぁ・・・・・・ごほっ・・・・・・そりゃ人だって・・・・・・殺す、かもしれない。でもな・・・・・・それは間違ってるんだよ」
人を殺す━━その行為はそれほどまでに愚行なんだ。
「確かに・・・・・・げほっごほっ・・・・・・はぁはぁ。確かに、愛する人を・・・・・・守りたい人の為だったら・・・・・・何でもしたい」
それが人の存在理由、存在意義の一つでもある。
「けどな・・・・・・それは、その質問は戯贈が『それを願う』かってのが・・・・・・大前提じゃねーか。愚問なんだよ・・・・・・戌亥。戯贈がそんなことを・・・・・・望む訳がねー」
僕は、徐々に機能し始めた横隔膜に乗っ取り言葉を紡ぎ出す。
「戌亥、お前の場合は『誰かの為』じゃなく『自分の為』の殺人、破壊行為じゃねーか。自分の価値観を概念を他人に押し付けてるだけの臆病者だよ。さながら、玩具を取り上げられて、だだをこねる子供さ」
そんな不条理で不合理な行動と、
「僕と戯贈の関係を比喩に使うんじゃねーよ」
それこそ種類は違えど想さが違う。
「逆に質問だよ、戌亥。お前は何の為に、誰の為に全てを壊すんだ?」
九紫戌亥の質問から考えられるのは、この行動は決して自分一人の為じゃないということ。
さっきの御託はただの煽りに過ぎない。九紫戌亥から真実を聞き出すための。
『お前だって戯贈の為なら人を殺すだろ』
この言葉の真意を。
作品名:サイコシリアル[4] 作家名:たし