サイコシリアル[4]
「だからこそだと思うわよ。一族と政府の会合なんて、そんなに大々的に開かれるわけがないじゃない。それに、殺し屋一族との会合よ。殺し屋といることは、最大級の保身になると思うわ。強いて言うなれば、殺し屋こそがセキュリティと考えるのがだとうかしらね」
まぁ、言われてみればそうか。完全に独断と偏見による仮定だけど、未知なる無知に対しては確定を求めること自体が不可能であるということだ。
「というか、戯贈。今、僕たちが取るべき選択肢はエレベーターに乗る、ということ以外ないような気がするのだけど、正々堂々正面から真っ向的に向かって行って大丈夫なのだろうか。もし、今現在会合的な何かが本当に行われていたとしたら、結構まずいんじゃないか」
「何を言っているの、涙雫君。むしろ、その方が好都合と言うべきよ。むしろそうであってほしいわね。九紫戌亥が暴走していることから、頻繁に会合行われている確率は高い。そして、本当に会合が行われていたとして、何がまずいというのよ。逆に考えてみれば、まだ九紫戌亥の計画が実行されていないということに等しいじゃない」
確かにそうだが。確かにそうではあるのだけれど。
「部外者である僕たちが、会合に入っていったらまずいってことだよ」
「その時はその時ね。それに、会合中ともあればそれこそセキュリティやら何やらで入れない気もするわ。もし、見つかってしまったのならば、愛の逃避行中です、とでも言っておけばいいでしょう」
何て、楽観的で短絡的な考え方なのだろう。
でも、ここでぐだぐだといらぬ仮定を立てるよりかは、理にかなっているか。
僕は、それもそうか、とだけ戯贈に返し、エレベーターのボタンを押した。
この施設のエレベーターの構造は何とも不思議で、下りのボタンしかなかった。地下施設か何かなのだろうか。
そして、すぐにエレベーターの扉が開かないことから予測するに、誰かが下に下って行ったまま、登ってきていないということを指している。
所謂、今、この施設には僕と戯贈以外の誰かが存在しているということだ。
間もなくして、エレベーターが一階に到着したことを、頭上の案内が知らせた。この案内は『F1~F10』までの数字を指しており、僕がエレベーターのボタンを押した時には『F10』で停止していた。所謂、地下十階において、何かしらの出来事が起きている問うこと。
間もなくして、エレベーターの扉が開いた。
その扉の開いた先には、残虐死体が広がっていた・・・・・・などという最悪のサプライズが待っているわけでもなく、九紫戌亥が佇んでいた・・・・・・なんて超展開も待っていなかった。
むしろ、待ってなくていい。いや、マジで。
「行くわよ、涙雫君」
戯贈が僕を促しつつ、エレベーターに乗り込んだ。躊躇うことも臆することもなく。
「全く頼もしいやつだよ」
「何か言った?」
「いや、何でもないよ」
もしかしたら、僕は今から九紫戌亥と出会い殺されるかもしれない、とか考えると何とも言えない気持ちに囚われる。むしろ、僕一人でこの場に赴いているのであったら、もうすでに逃げ出している所だ。
それほどまでに、何かが起きる・・・・・・いや、起きているという嫌な予感に襲われているのだ。
さながらラスボス戦前のRPGの主人公の気持ちだ。
仲間がいる、ということはそれほどまでに心強い。
相棒がいる、ということはそれほどまでに支えられる。
「最終局面に行くわよ」
戯贈は、ふざけているのか真面目なのか、どっちとも取れることを言いながら『F10』ボタンを押した。
作品名:サイコシリアル[4] 作家名:たし