サイコシリアル[4]
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天才とは実に気まぐれなのだろう。気まぐれで孤独で。何かを抱え込んでいるのだろう。
天才が故の思考回路。天才が故の行動。天才が故、為し得ること。最強の殺し屋。
一族を潰す━━九紫戌亥は言っていた。僕の導き出した仮定をなくしても、次に狙われる人間は容易に想像することが出来る。
そして九紫が殺された、これが物語っている。次に狙われる人間を。
九紫一族の長、九紫十弦であることを。
とある施設。
僕と戯贈は、とある施設に赴いていた。
あの後、僕と戯贈はさらなる推測を立てた。戯贈の両親が政府側という僕の仮定を戯贈がさらなる裏付けをしたのだ。戯贈の両親は、政府側の人間であるという仮定に更なる推測をたてたのだ。
戯贈の両親が良く利用していたという施設。朧気町近郊のとある施設を両親が利用していたことを、戯贈が覚えていたのだ。
九紫が前に戯贈の両親は、政府の奥に位置する人間と言っていたのを踏まえての推測である。
政府の奥、所謂、中枢に位置する人間は、一族と何かしらの会合、コネクションを図っていたはずだと。そう仮定することが出来る。
そして、戯贈の両親の良く利用していた施設がそうではないのかと。
九紫が死んで、その明朝、僕と戯贈はこの施設を訪れていた。
傍から見たらただの、廃墟の様で、しかし何かしらの機能はしていそうな、そんな異色を放つ施設。
僕と戯贈は、互いに口を開こうとせずに、施設の入り口の引き戸を開けた。引き戸には鍵がかかっておらず、中に入ると正面にエレベーターがあるだけの、簡素な造りになっていた。
「なんか・・・・・・仮定が的外れな気がしてきたな。政府と一族の会合が本当にこの場で行われていたのなら、もっと厳重なセキュリティを張っていても良さそうなんだけど」
それが、たった一つのエレベーターを前にした僕の感想だった。一言で言えば、しょぼいのだ。
作品名:サイコシリアル[4] 作家名:たし