サイコシリアル[4]
「でも、涙雫君。それだと、今日枝苑が言ってたことと食い違いが生じるわよ。枝苑は『何故殺したのかは分からない』と言っていたのだから」
確かにそうだ。そうだけど、人間の心理においてそれにも仮定を立てることが出来る。
「九紫は嘘をついていたんだろう。だから、あんなにも悲しい表情をしていたんだ。悲痛で悲壮で悲観的な表情を。九紫戌亥がやろうとしている真実、組織を取り巻く事実、そして僕たちに偽りを述べている罪悪感。全てを知った上で九紫は、全てを背負い込み模索していたんじゃないのかな。僕たちを一族の問題に巻き込みたくなかったとか、いくらでも説明がつくよ」
そう、いくらでも説明がつく。今回の事象も例外ではないけど、僕が今、戯贈に話した仮定が一番もっともらしく。『裏切り』という面で思考すると、一番納得がいく仮定なだけだ。
「だからさ、戯贈。僕たちが止めなきゃいけないと思うんだ。殺さなきゃいけないんだよ、この連鎖的殺人を。正義のヒーローでも正義の味方でも物語の主人公でもなく、ただ九紫の願いの為に」
「わかっているわよ、そんなこと。悲劇は喜劇に成りえることはないのだけれど、戯劇くらいは終わらせなきゃいけないのだから」
終わることがなくとも、殺せずとも、せめて止めなければならないのだ。
作品名:サイコシリアル[4] 作家名:たし