サイコシリアル[4]
「しかし遅いな、戯贈」
戯贈に電話をしたのは、約二十五分前。
彼女の身体的欠陥を考慮すれば、タクシーを使用して来ると思ったのだが。そして何より何かしらの連絡があってもいいはずだ。
これも仮定の話だ。推論でしかない。
そして、この仮定は戯贈の身に何もないこと、要するに戯贈が無事な場合にのみ成立する過程。
もしかしたら、仮定とは愚の骨頂なのかもしれない。自分の概念で、理論で、推論で、決めつけるのだから。僕は、人間は臆病だからこそ、『こうであれば』『ああなったなら』とか、そういう希望的観測から決めつけるのだから。そして、その対極に位置する仮定。『こうでなければいい』とか、そういう悲観的憶測。だから、僕は戯贈が無事でいてくれという希望的観測、悲観的憶測から様々な仮定を打ち立ててしまう。
次に狙われるのは、戯贈なのではないかと。
しかし、戯贈には殺される理由が見つからない。霞ヶ窪は目撃者として殺され、九紫は追跡者として殺された。
戯贈は、この二つには当てはまらない。ただ犯人を探している捜索者なのだから。
考えすぎか・・・・・・。臆病的思考はなしにしよう。
すると、その時ガチャリと玄関の方から音が聞こえた。
「涙雫君、遅くなってごめんなさい。枝苑は?」
戯贈だった。
作品名:サイコシリアル[4] 作家名:たし