サイコシリアル[4]
「何で、早く気付くことが出来なかったんだろうな」
九紫を取り囲む赤い海は、乾ききり、赤黒く変色していた。ということは、僕が祢黒病棟を訪れる前に殺されたということだ。
それでも、後悔せざるを得ない。
もっと早く、もっと的確に気付いていれば、この殺人を殺すことが出来たのかもしれないと。
九紫が殺されたのは、僕らと別れてから直ぐなのだろうか。あんなにも、無邪気で真剣で悲しんでいたのに。その数時間後には命がたたれてしまったのだろうか。
齢十六歳の少女は、殺されたのだろうか。
「・・・・・・九紫は恨んでいるのか?」
九紫は決して、犯人を・・・・・・九紫戌亥を嫌ってはいなかったであろう。むしろ、好いていたであろう。どんな兄でも、結局は血の繋がった兄なのだから。
僕は、九紫と九紫戌亥の詳しい兄弟関係は分からない。でも、先刻、三人で話している時の九紫の口調からしたら決して九紫戌亥の事を恨んでなんかいなかった。
恨んでいたら、あんなにも悲しい表情をしないだろう。
好いている人間、しかも兄に殺される。どんな気持ちなんだろう。
仰向けで死んでいるということは、九紫戌亥の顔をみたのだろうか。
その時、九紫は何を思ったんだろうか。
何を考えたんだろうか。
作品名:サイコシリアル[4] 作家名:たし