サイコシリアル[4]
しかし動かないと思っても、意思に反して・・・・・・意思に反さずして、本能のように僕は腰を上げ九紫の近くへと歩み寄って行った。おぼつかない足取りで、フラフラとアルコールを摂取したかのように。
目の前で、本当の意味での目の前で九紫の死を確認した。
目を開き、苦痛に歪んでいる様は先程の霞ヶ窪の死に方と酷似していた。比べたくなくとも、残酷なまでに酷似していた。不思議と、霞ヶ窪の死体を見た時のように、吐き気は襲ってこない。それは、死んでいるのが九紫だからなのか僕には分からない。精神論も生物学も僕には分からない。
だけど。
今、流れている涙は、死んでいるのが九紫だから流れているのだろう。
今、吐き出している嗚咽は、死んでいるのが九紫だからだろう。
創作された物語のように、死んだふりをしていたとか、魔法で生き返るとか、そんなことはありゃしない。全てが現実で、目の前が現状だ。
「・・・・・・九紫」
僕は、九紫に語りかけた。返事が返ってくるはずがないのに、語りかけた。
作品名:サイコシリアル[4] 作家名:たし