キミへの贈り物
ふたりが会えるかどうかなんて分からない。たぶん、今会えなかったらその関係が変わる機会は二度と訪れないような気もする。
心のどこかで(会えなかったらいい)と思っていた。そんな心を許したらアイツの想いを応援する気持ちにも嘘がなくなったように感じた。
いつの間にか雪が降っているのに気がつく。
雨だったらすぐに”涙”を連想するけど、雪はちょっと違うな。
同じように冷たいはずなのに、静かにふわふわと降り積もる雪はなんだか心を温かくするみたい。
白く澄んだ空を見上げながら、少し震えた白い息を吐きながら、わたしは祈った。
「夏美ッ!」
その声の方を向くと、坂道の下に由紀ちゃんと智ちゃんの心配そうな顔が見えた。
「どうした? 何かあった?」
わたしの頭の上の雪を払いながら由紀ちゃんが聞く。
「ううん……大丈夫」
「電話しても携帯繋がらないから」
「ああ、ごめん。電源切ってた」
少し考えて、わたしはふたりに全部話した。
たぶん由紀ちゃんには怒られると思ったけど、隠し事はしたくなかったんだ。
「何やってんだよッ!」
案の定、話が篠原へのメールにまで進むと由紀ちゃんの怒りが爆発した。
「そんなのほっとけばいいじゃんかよ! アタシが見つけてたら、あの女を追い返してたよ!!」
「それはできないよ〜」
今にも学校へ走っていきそうな由紀ちゃんをなだめながらわたしが苦笑する。
「なんで? 篠原が好きなんでしょ?!」
「好きだからだよ」
それまで黙って聞いていた智ちゃんが助け船を出してくれた。
「なんだよ、それ?! そんなの恋じゃないよ!」
「うん……そうかもね」
たぶん、わたしは恋をしたかったわけじゃないんだ。
「もう、いいじゃない。寒いから早くナツの家に行こうよ」
そう言って智ちゃんが歩き出す。
「……分かったよ……ごめん、夏美」
「ううん。ありがとう」
雪がかなり本降りになっていて、髪も顔も濡れて泣いていても分からなくなる。
今更ながらに智ちゃんが鞄から折り畳み傘を取り出したけど、由紀ちゃんが「夏美の家まで競争しよう」って言って走り出した。
「なんで走るのよ」
呆れたように文句を言いながらも鈍足の智ちゃんが後を追いかける。
もちろん、陸上部のわたしは帰宅部と天文部のふたりを軽々と追い抜いてやった。