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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1

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 などと喚かなくとも、放っておけば、
 『作品の製作を続けてください』
 という指示なり指令がブランセーバーから出されるはず。なぜならば、ほかの人間では多分エターナルラブは作れないはずだから。そこで条件などを話し合えばそれで済むこと。喧嘩になどなりようはずもない。だというのにいったい何がどうなっているのか。いや。潰れる会社、潰れる会社の社員というのはそういうものなのか。
 「で、手打ちがなされて、『キンダーCC』という部門名はなくなり、16CCゲームに変更になった……」
 大井弘子は声を低くして言い、妹のほうも渋い顔で応じる。
 「会社同士の付き合いを、現場のプライドに優先させるってことだよね」
 
 ――俺たちがキンダーガーデン! 俺たちこそ正統!
 
 現場の想いなど資本の前ではまったく意味がないということ。そのようなことは女子高生の丸山花世でも理解している。かくして16CCの上層部は、喚く現場を切り捨てた。
 「キンダーガーデンの残党ってさ……頭悪いんじゃないの? っていうか、権利とか著作権とか、そういう概念っていうのがそいつらにはないのかねー」
 「そうね。そうかもしれないわね。それとも、何か深慮があるのか」
 大井弘子は言った。妹分は割合に他人に対する見切りが早く、だから、
 
 ――多分、こいつは馬鹿に違いない。
 
 と馬鹿認定を済ませば、それで終わりである。だが、大井弘子はよく言えば他人を買いかぶる、そういう癖がある。妹としてはそこがちょっと心配なところであり……。
 「とにかく、そういうことなのね。そういう状況で、私のところに仕事が持ってこられたわけ」
 「うーん……ってことは、つまり、アネキのところに話を持ってきたのは16CCの連中ってわけね」
 「そう……いいえ」
 「……」
 大井弘子はちょっと考え込むような態度を見せた。
 「違うの?」
 「違わないのだけれど……まあ、そうね。だいたいあっているけれど、違うのね。私に話を持ってきたのは前にシナリオを一緒に書いた同業者で……ほら、森田さんって知ってるでしょ? 前に、一度、この店で花世も会っていて……あの人」
 「森田……ああ、モリヤンか。インコが死んで泣き崩れてた人っしょ?」