むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1
――俺たちが、俺たちこそが本当のキンダーガーデンなんだ!
という名乗り……はいいが、そんな叫びに何の意味があるのか。
「でも権利はブランって会社にに持ってかれたんでしょ?」
「そうね。社長と一緒にブランに全て持っていかれてしまった」
「ああ、でも、カーテンコールだっけ、作品はキンダーの残党が作っていたんだよね?」
「そう」
おかしなねじれである。
社長プラス権利はブランという会社に。作品のデータと写真の多くは16CCに。そして多分だが、
『俺たちが本当のキンダーなんだ!』
とヒステリックに叫ぶ人々と、権利のホルダーであるブラン間には熱烈な友好関係があるとは考えにくい。
「なんじゃそりゃ……」
奇奇怪怪な話、である。あまりにもおかしな話であるからこそ耳をそばだてる。物書きヤクザは姉の顔をまじまじと見つめている。
「ただ、いつまでもそうしているわけにはいかない。だから、手打ちがなされた」
「……そりゃそうだよね」
「キンダーの側がブランの側から権利を借りる。お互いに業務提携して、売り上げの何パーセントかをブランにライセンス費として払う。そういうことになったのね」
「まあそれが一番穏当だよね」
作品は作りかけ。出ないよりは出したほうがいい。実利はいつでも感情的なしこりに勝る。
「ってか、なんで、キンダーの残党ってそんな波風立つようなことしたのかね」
丸山花世は言った。
「キンダーCCなんて名前……ブランセーバーって会社に対するあてつけみたいだよね。実際、権利はブランが持ってるわけで、裁判になったら負けんじゃないの?」
「さて。自分たちがいなければ作品は出来ないという自負。というか、思いあがりなのかしら、ね。そのあたりのことは私も分からないの。向こうのスタッフにまだ会ったわけではないから」
「ふーん」
丸山花世は首をかしげる。
「とにかく、キンダーCCとブランセーバーの行き違いはトップ同士の話し合いで手打ちになったの」
「まあ、そうだよね。っていうか、そんなこじれるような問題でもねーと思うんだけど」
社長と権利はブランに。現場スタッフとデータなどは16CCへ。普通であれば、冷却期間を置いて話あえば済むこと。
――俺たちこそが正統なキンダーガーデンなんだ!
作品名:むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1 作家名:黄支亮