むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1
「権利は確かにブランセーバー社が買ったの。もちろん、競売に不正は無かったし、法的な問題も無かった。実際、キンダーガーデンの社長さんはブランセーバーに重役待遇で迎えられている。だから……」
「ナシはついてたって、ことか」
権利をプラスで社長ごと買い取ってくれ。そういうことなのだろう。
「そう」
「めでたしめでたしじゃん……って、そういうわけでもなさそうだけど」
「そうね。キンダーガーデンの社長はいいとして、製作の現場はそのことを知らなかったのね。だから、『カーテンコール』を製作していたスタッフは、別会社である16CCという会社に合流して、そこでエタールラブの権利を落札するつもりだった……」
「……なんかきな臭いにおいがするんだけれど」
丸山花世は苦い顔をした。
「ってか、16CCって変な名前だよね。何の会社なの?」
名前は体を現すのだ。ゲームの会社もだから、横文字カタカナの社名が多いし『ゲームの会社』と説明を受ければ、
『うん。そんな感じだ』
と、納得するものが多い。ブランセーバーもゲームの会社だといわれれば、割合に容易に納得がいく。だが、16CCとは……それはいったい何の会社なのか実態が判然としない。と。丸山花世はあっと小さな声を上げた。
「あ、あのさ、もしかしてだけれど、アネキ、四×四、十六ってことで16CCじゃないよね?」
「……うーん、どうなのかしら」
大井弘子は沈黙し、丸山花世も口を閉ざす。事実であって欲しくない推察というものもこの世にはあるのだ。
「まあいいや。名前については。で、なんなの、その会社」
「……16CCという会社は、NRTグループというグループ企業で音楽製作を担当している会社らしいわね。で、以前からキンダーガーデンとは楽曲の製作とかでつながりがあったみたいなの」
「ふーん」
「そんな縁もあって投げ出されたキンダーの社員達はそこに身を寄せて、エターナルラブの製作を続けることになったみたいね。16CCの中にわざわざキンダーCCという部門を作って……」
「キンダーCCねえ……」
丸山花世は口をへの字に結んだ。ヤクザな物書きも呆れることはあるのだ。
「なんか……それって、ねえ」
児戯、である。
キンダーCC。
作品名:むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1 作家名:黄支亮