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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1

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 「お金ではなくて……名誉でもなくて、そういう神様のついた作品と巡り合うことが作り手の幸せ、か」
 妹は姉に言った。それは普段から姉が妹に言い置くこと。
 「そう」
 だとすれば大井弘子が妹分を仕事に誘った理由は透けて見えてくる。
 長く生きてきた作品。その作品に触れること。それは作り手としてきっと意味のあること。いくら売れるかではない。そういうめぐり合わせにあること。それが作り手として最大の名誉でり、また本物の作り手である証。
 「ふーん」
 丸山花世は握っていた携帯を大井弘子に返した。
 「でも……会社は潰れた」
 「そうね。株式会社キンダーガーデンは一昨年潰れてる」
 「エターナルラブは五作と幾つかの外伝作品で終わった」
 「そう。終わった」
 「でも六を作る。どういうことなん?」
 会社がなくなれば普通は作品の命脈も費える。そういうもの。けれど、作品は生き返ろうとしている。そんなことがあるのか。許されるのか。物理的にそのようなこが可能なのか。
 「ちょっと話が長くなるわね」
 大井弘子はコーヒーを一口。それから語り始める。
 「キンダーガーデンという会社は自己破産をしてしまった。その時、エターナルラブの製作チームは五作目のアペンドストーリー『カーテンコール』を製作中だったのね」
 「『カーテンコール』、ね……」
 名は体を現す。大井弘子はいつもそう言っている。妹はそのことを知っているのだ。そして、そういう象徴的なタイトルをめぐり合わせとして戴く作品は、やはり普通ではない。
 「で、キンダーガーデンが保有しているタイトルは競売にかけられることになったの」
 「ふーん……」
 生々しい話。金が絡む話は、実は物書きヤクザはあまり興味が無い。
 「管財人によって競売にかけられた権利は、同じようなゲームの会社であるブランセーバーという会社に落札されたの」
 「ふーん……って、ことは、アネキはそのブランセーバーからお声がかかったってそういうことなん?」
 「それが、ちょっと違うのね」
 「……」
 「花世。この仕事は成り立ちからして相当おかしなことになっているの」
 大井弘子は明らかに警戒をしている。ただ楽しく幸せにというわけには……どうもいかないらしい。