むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1
――ちょっと宗教がかったおかしなカルト集団。
そのようにWCAを揶揄する声も業界にはあるとかないとか。そして三神は言った。
「はい。そうです。私もWCAの会員です。お二人と一緒です」
「えー、あんた、WCAの協会員なん?」
小生意気な娘は素っ頓狂な声をあげる。そういわれれば、この奇妙な雰囲気は……だが。
「アネキと私以外に始めて見たわ、WCAの会員……」
「私もほとんど見ませんね。友人でマンガ家をやっている男が一人……あとは、あなたがた……」
「え……って、ことは」
丸山花世ははたと気がついた。
「あんた、私らがWCAの人間だって最初から……」
「はい。知ってましたよ」
丸山花世は慌てて尋ねる。
「え? どうやって知ったの? そんなことできんの?」
小娘はほかの会員を知らないし、知る術があるとも思っていない。
「できますよ。WCAの本部に問い合わせれば。まあ、ちょっと変わったところですから、普通のやり方ではないですけど」
「ねえ、どうすんの、どうやって調べんの?」
小娘は相手の話のおかしなところに食いついた。大井弘子は多分『会員検索』のやり方を知っているのだろう。だから笑っている。
「テストの時のハガキ。そこに事務局本部の電話番号が載っています。そこに電話をかけて、こちらの名前と会員番号を言います。平日の十七時から二十時までです」
「……」
「それから、知りたい相手の名前を訊ねます。たとえば『丸山花世』について知りたければ、『丸山花世はWCAの会員ですか?』と聞くのです」
「それで?」
「会員でなければ『存じ上げません』と言われます。それで電話は切れます。もしも会員ならば……」
「会員ならば?」
「相手は何も言いません。沈黙です。沈黙のまま電話を切ります。それで、会員だと確認できます」
「そ、そんなことになってたんだ……」
小娘は大いに感心している。IT時代に、そんなアナクロな秘密結社のようなことをやっているとは……いや、WCAは秘密結社であるのか。
「ア、アネキ、知ってた? すげーな、WCAって!」
「そうね」
大井弘子は苦笑いである。
作品名:むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1 作家名:黄支亮