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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1

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 三神智仁はしれっとしている。まったく悪びれないその様子に丸山花世は感心している。
 「でもさー、16CCのほうは、越田っていう人でやってくるわけでしょ?」
 それは……ともちかという人物や三神にとってはいいことかもしれないが、16CCにとっては気分的に面白くないことではないか。
 「……向こうの連中、納得するかな?」
 丸山花世の問いに三神は応じる。
 「彼らの同意や納得は関係ありません。何か言い分があるのであれば16CCもともちかを使えばよろしい。負け戦が続いている越田に執着する必要などないのです。それだけのことです」
 「……」
 「もとよりエターという作品は越田の私物ではありません。越田よりも能力がある人間が現れれば、越田は当然自分の席を譲らなければなりません」
 三神は冷徹である。冷酷というよりは残忍なのか。だが、その徹底振りが聞いていて心地よいのは何故なのか。
 「それはほかのスタッフも同じです。市原もそうですし、当然ですが私もそうなのです。私も含めて今いるスタッフより能力が優れた人物が現れた場合、能力の劣ったものは自分の地位を新任の者に譲らなければなりません」
 三神は筋が通っている。
 「どうしても作品に携わりたいのであれば新任の、自分よりも能力のある人間の下につけばいい。それだけです」
 男は続ける。 
 「作品の権利は会社のものです。法律論では。ですが、作品はファンのものなのです。なによりも作品の魂は作品のものです。私達クリエイターというものは、元来、作品が生まれるのを手伝い、補助の役回りを担っているだけです。作品を自分のもの、私物と考えるのは思いあがりです」
 「えーと……」
 丸山花世は沈黙する。どこかで聞いたような言説。どこかで……そんなことを言っていた変わった連中がいたが……。
 「三神さん、あなたは……」
 大井弘子は眼差しを鋭くして言った。妹が思い出せないことを明晰な姉は察知している。そういう変わった考えを振りかざす集団が存在している。
 「あなた、もしかしてWCAの……?」
 WCA。ワールド・クリエイターズ・アソシエイツ。物語を作る力を持つ人々が入ることを許される奇妙な集団。ちなみに、組織の会員になったからといって特に便益が図られることはない。ただ会員証の水晶球が送られてくるだけ。