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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1

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 「作品を作ったのはそれはスタッフです。多分、越田や市原たちは俺たちが苦労をして作品を作ったんだと言うでしょう。苦労したのは自分たちであって、作品はただのモノ。生産物であると。それはそうです。その通りなのです。けれど私はそのような意見とは別の考えを持っているのです」
 別の考え。
 それこそが我慢の出来ない一線。
 「あれは作品の意思です。何としても、這ってでもファンのところに戻っていきたいという作品の意思です。だから、カーテンコールという作品は世に出たのです。それこそが小さな奇跡なのです。誰も……この国のほとんどの人はカーテンコールという作品のことなど知りもしません。でも、やはり倒産した会社の作品が世に出るということは奇跡なのです」
 それはとてもおかしな考え方。ありえない素っ頓狂な思考。けれど、それは丸山花世にとっても大井弘子にとっても腑に落ちるものの考え方。共感できる叫び。
 「いじらしい作品だと私は思うのです、エターナルラブという作品は。いとおしい作品なのです。愛するに足る作品なのです。私は、この作品が紙芝居といわれる作品が本当にいとおしいのです」
 そういう告白を丸山花世は前にも聞いたことがあった。形を持たないエロラノベのキャラに対する想いを熱く熱く歌い上げた好漢。そいつは、最後まで小説家として誇り高く死んでいった。
 「ですから、私はエターナルラブという作品が哂われるようなことになることを看過できないのです。『またも潰れてなくなった』と物笑いになるようなことは許しがたい。もちろん、それは作品はいずれ終わるときが来ます。いずれは。それは仕方がないことなのです。人と同じで作品もいずれは死ぬのです。ですが、それはおそらく今ではないはずです。手の打ちようがあるのならば、何か策が講じられるのであれば、できる限りのことはしなければなりません。それが、私を育ててくれた作品に対する私の恩返しなのです」
 三神の声には抑揚が無い。だが。言葉が単調だからと言って、魂までも平板ではないのだ。