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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1

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 「アニメーターあがりの原画イラストは職人です」
 「悪ぃことじゃないじゃんか。何かまずいん?」
 「極端な言い方ですが、芸術家ではないのです。職人。違いは、折れないか折れるか、です」
 「……」
 それは丸山花世の言う、小説家とライターの違いにも似た理屈
 「芸術家は骨があって容易には折れません。ですから、彼らの生涯は不遇な場合が多いのです。職人はそうではありません。風に揺れる柳のようです。金のために仕事をしているわけですから。ですが、それではダメなのです。それではお客をひきつけることはできません。ゲームでもイラストでも……私達が求めているのはアンカーです。碇なのです。重くなければいけない。そうでないとお客という船をつなぎとめることができません。大勢のお客をひきつけるには不器用な、でも絶対に折れない気骨が必要なのです。気骨という表現が気に入らないのであれば、絵から匂い立ってくる魅力です。アニメーターあがりのイラストレーター、原画家は、何でも描けるのです。本当に何でも描くことができる。でも『その描き手でしか描けないたった一つの描き筋』を、アニメーターあがりのイラストは描けないのです。何者にもなれる。何物にもなり得る。でもなれないものがある。それは自分自身。それではゲームのキャラとして弱いのです。もちろんですが、今、私が言ったことは相対的なものです。どこの世界にも特別な存在、特殊な天才はいますからアニメーターあがりでも人を惹きつける『自分の画風』を持っている人間はおります。ただ、ともちかが去って以降エターが売り上げを減らし続けたのはこれだけは事実です」
 「……」
 大井姉妹は沈黙である。
 「もっとも人は変わるものです。越田も会社の倒産を経験しました。何か彼も得るものはあったはずです。ですから私はそこに賭けてみようと思うのです。奇跡が起こる可能性は排除されるべきではありません。その可能性がゼロに限りなく近かったとしても、です」
 「ふーん」
 三神の話し方は理屈っぽく、ちょっと回りくどいところがある。丸山花世は口を尖らせるようにして頷いた。
 ――市原。同じ会社の人間が三神で、原画の担当は越田。前任のイラストはともちかひびき、ね……。