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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1

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 「おそらく市原は、エターの6で売りにするのは『大井一矢シナリオ』という点ですが、それだけではお客は呼び込めないと思います……もちろん、これは大井一矢を侮っての発言でありません。そうではなくて、ゲームは小説と違ってシナリオだけでは成り立たない、そういうものだということなのです」
 「……」
 「大井一矢のプラス分は重要なファクターです。けれど、ゲームはシナリオだけでは立ち行きません。シナリオに見合うイラスト、シナリオと同じぐらいの魅力を持ったイラストの器量が必要なのです。シナリオとイラストは車輪の両輪。同程度の力で作品は進むことかできる。どちらかが劣っていれば作品はその場でスピンして立ち往生します」
 「16CCでイラスト描いてる奴はそこまでの力はないってこと?」
 生意気な小娘は言った。そして三神智仁は即答する。
 「もともとエターという作品はともちかひびきというイラストレーターがキャラデザをしていました」
 「存じ上げています」
 大井弘子は頷き、不勉強な妹は曖昧に首を縦に振った。ともちかなどという名前は丸山花世は知らない。だが、困ったときは頷いておけばいいのだ。あとは聡明な姉が何とかしてくれるだろう。
 「一作目、二作目はともちかキャラでした。ですから十万本のセールスを売り上げることが出来た。三作目からはともちかが下り、キンダーの社員がキャラデザを担当するようになりました。売り上げは落ちました。もちろん、後任の原画イラスト担当だけが悪いのではないのですが……まあ、それでも大きな要因でしょう」
 「……」
 「ともちかあってのエターです。ともちかがいないエターはエターではない。少なくともお客はそう思っている。私もそう思いますから」
 「ふーん……」
 彼らが我慢がならなかった。私も彼らに我慢がならなかった。
 三神のような人間、ナイーブな人間には耐えられないかもしれない。
 「エターの6に関して言えば原画はキンダーから合流してきた越田という男が担当するはずです」
 「越田さんでは荷が重いと?」
 「越田は三作やって、ともちかを越えることが出来ませんでした。それに……」
 「それに?」
 丸山花世は食いつく。
 「越田はアニメーター出身です」
 「それが……どしたん?」