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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1

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 姉は妹のことを眺めている。不遜でおしゃべりな小娘はいつものようにスカラベ……フンコロガシのペンダントを無意識に弄んでいる。水晶の球を転がす金属のコガネムシ。それは、WCAと呼ばれる組織の会員認定証。水晶球は持っている作家のレベルが上がるごとに微妙に色合いを変えていくのだそうな。ちなみに、小娘は水晶の色が変化するなどという物理的にありえないことは信じていないし、当然だが見たこともない。
 「とにかく、話をかいつまんでしましょう」
 「ああ、うん。そーして」
 遠い親類。はとこ同士。大井弘子と丸山花世は顔立ちもあまり似ていない。だというのに、実の姉妹のように息が合っている。血統としては遠いが魂的には極めて近しい。だから、話も早い。
 「さて……と、言っても何から話したものか。そうね……まずは、エターナルラブっていう作品、花世、知ってる?」
 「うん? エターナルラブ? 知らんなあ……マンガ? アニメじゃないよね」
 「ゲーム。プレステの……」
 「エターナル、エターナル……うーん。そんなのあったっけ?」
 「ギャルゲー、ね」
 姉の言葉に丸山花世は僅かに眉をひそめた。
 「ギャルゲーってさあ……なんか、その言い方、あんまり愛を感じないよね。一段低い相手を観るような」
 話は脱線し、妹が不平を言う間に大井弘子は笑いながら携帯をいじっている。ネットで検索。いつでも画像を取り出される。資料要らずな時代である。
 「だいたい今時、ギャルなんて言う奴いねーっつーの。大村ぐらいか……まあいいけどさ」
 「ほら、これ……」
 三インチの液晶には、ゲームイラストが映っている。制服姿の女子が並んだ典型的なギャルゲーのパッケージイラスト。
 「あ、うん……これか。うん。エターナルラブ。見たことあんな……」
 丸山花世は頷いた。
 「思い出した。そういうの、ある。有楽町の量販店で売ってるの見たことあるよ。二年ぐらい前か……。結構、たくさん出ているよね」
 「そうね。シリーズもので、外伝を含めると十作ぐらい出ている……」
 「結構息の長い作品じゃんか……で?」
 「この作品の六作目。そのシナリオをやってくれないかって、そういう話を貰っているのね」
 「それを私に手伝えって?」
 「そうね」