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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1

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 「……それでは、権利的にぶつかりませんか?」
 大井弘子は言った。作品を作る権利を与えておきながら、別ラインで同じ作品を作るのは商業道徳的にまずくはないか。だが、三神は平気な顔をしている。
 「あちらに譲ったのは『ゲーム機用のゲームの権利』だけです。同人ゲームであるとか、携帯電話に配信するための作品については譲りませんでした。商業的に延び代があるのはもはや同人と携帯電話だけですから」
 直截にしてごまかしをしない言い方。だが、聞いているほうはそのほうが安心である。
 「ゲーム機でのソフトは、百億単位の金銭的が融通できる大手以外は利益を出すことがができません。ブランにもそこまでの資金的な余力はありません」
 「つまり……16CCには金にならないところだけをくれてやったっつーこと?」
 丸山花世は怯みながら訊ね、そして三神智仁はあっさり言った。
 「いいえ。彼らの頑張りに賭けたのです。彼らが努力をして十万本を売れば、権利の買い取りに使った金銭に見合うペイはあると思います」
 「そんなことが可能でしょうか?」
 大井弘子は懐疑的である。
 「プレステというゲーム機はもはや終末期にあります。そのようなハードのゲームが十万本も売れるとは常識的に考えられないのでは? 何よりも……キンダーガーデンという会社は……」
 大井弘子は言葉のおしまいを濁し、三神はうんと頷いた。
 「潰れていますしね。十万本を売る能力があるスタッフであれば、キンダーは生きていたでしょう。潰れることもない」
 ――こいつはっきり言うな……。
 丸山花世は若い男の顔を見ている。と。三神は思いも寄らぬことを言った。
 「キンダーのダメさはそこにかつていた私が一番よく理解しています」
 「え? あんた、キンダーの社員だったの?」
 「そうです。入社したのは最終末期でしたが。多分お二人ともご存知な名前だと思いますが、FMBの市原のことも知っています。上司でしたから」
 「……」
 「キンダーは自己破産をして、社長はセーバーに来ました。私はその時一緒にこちらに来たのです」
 「とうして16CCに行かなかったん?」
 丸山花世は尋ね、男は応じる。
 「彼らが私に我慢がならなかったように、私も彼らに我慢がならなかったからです」
 「……」