むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1
「どさくさにまぎれて他人のふんどしで相撲を取り、あわよくばクリエイターとしての名声を得てなりあがろうとする。薄汚い夢想家。反吐が出ます」
三神は抑揚の無い声で言った。この男……丸山花世とは別ベクトルで破壊神である。丸山花世が真っ赤に燃える熱兵器であるならば、三神と言う男は絶対零度の冷凍攻撃。
「そういうことを聞いていますから、私は、あなたの能力についても把握しています。丸山さん。シナリオで人を殺せる人間はやはり普通ではないのです」
「……うーん」
丸山花世は微妙な顔で呻いた。そんな褒め方というのがあっていいのだろうか。そんな賞賛を喜んで受け入れていいのか。小娘は腕組みをして考え込み、そこで大井弘子が言った。交渉の主は大井弘子であるのだ。丸山花世は今回は副、である。
「それで、三神さん。いったいどういうシナリオを私達に?」
「はい。エターナルラブを作ってください」
「……」
それはとてもおかしな注文であった。いや、おかしくないのか。
「えーと……言われなくとも、私ら16CCってところでこれからエターナルラブっていうのを作ることになってて、それはあんたに言われなくても決まっているんだけど」
妹が言い、さらに姉が続けて言う。
「どこまでご存知なのかは分かりかねますが、私たちは16CCでエターナルラブの六作目を作ることになっています。そのことは……ご存知ですよね?」
男は、すぐに応じる。
「はい。知ってます。その上で、16CCて作られるエターナル6とは別に私のところで別のエターナルを作ってください」
「……」
妹は姉のほう見やった。
――こいつは……またおかしな雲行きになってきやがったぞ。
けれど、姉のほうは何も言わない。ただ状況を見守り、相手の言葉の意味を探っている。
「16CCのエターナルとは違うエターナルを?」
丸山花世は尋ね、男は頷く。
「そうです」
「そんなこと……なんかおかしくねーか?」
生意気な小娘は言った。男は小娘の非礼をなじったりはしない。
「繰り返しますが16CCでエターの六作目が作られることは認識しています。ブランもあちらとは業務提携をしたうえで、プレステをはじめとするゲーム機用のゲームの製作権利を供与していますから」
作品名:むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1 作家名:黄支亮