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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1

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 グラップラー。『絶望的な作品を作れ』と丸山花世にけしかけたおかしな同人メーカー。そのメーカーの営業担当が三重野。そして丸山花世は三重野の魂を切り刻んで彼が望む『衝撃的な作品』を書き上げていたのだ。その後グラップラーがどうなったのか、丸山花世は知らない。
 「え、そうなの? 三重野のおっさん、病院送りになっちまったの? なんで?」
 「あなたの作品を最後まで読みきったことで精神に変調をきたしたそうです」
 「へー……」
 丸山花世は曖昧に頷いた。そう言えば以前、斉藤亜矢子がイツキに来たときに、
 ――丸山花世の作品を読んだスタッフは全員が全員気落ちして暗くなった
 というようなことは言っていたが、どうも連中のダメージは気落ちぐらいでは済まなかったようである。
 「べれった……グラップラーのべれったの友人に持田雪というものがいるのです。私の高校時代の後輩です。その人間から聞きました」
 「……」
 業界、いかにも狭い。
 「あなたが三重野氏を心療内科に送ったのです」
 「ふーん。三重野のおっさん病院送りになったのか……」
 丸山花世は複雑な表情を作った。小娘も多少は反省をする。お灸が過ぎたか。いや、しかし。珍しく自省する丸山花世に三神は真顔で言った。
 「丸山さん。あなたは本当にいいことをしました」
 皮肉ではないのだろう。
 「……」
 「三重野という人は営業を極めるべきでした。営業ということで会社に入社したわけですから、彼はそれを全うしなければならない。途中で自分の職責を勝手に変更するのは天命に対する冒涜です。営業は勝手にクリエイターになってはいけない」
 「えーと……」
 自分と同等、それ以上に過激な相手に、丸山花世も怯んでいる。一方、大井弘子は妹と、妹を怯ませる変わった男の会話をじっと聞いている。
 「時々いるのです。営業で入って編集に横滑りであるとか、営業で入ってプランナー。それは間違った生き方です」
 「……」
 「クリエイターになるのであれば、天意を問わなければならない。小説の公募に作品を送るとか、マンガを雑誌に持ち込むとか。なにも大賞をとる必要はありません。努力賞や期待賞でいいのです。三重野という男はそういう天意を得てから自分の作品を作るべきでした」
 男は感情を表に出さない。