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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1

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 「あとは値段ですね。必要としているものであっても高すぎては意味がない。七千円は高すぎる。でも、千五百円ならば納得する。蒼ファルは千八百円。値段としては最高でしょう」
 「……」
 「蒼ファルだけではありません。その前の作品『ざくろの木』もプレイしました。東祐樹名で書かれた『鬼の子の詩』も拝読しました」
 「すげーな、鬼の子の詩まで……」
 丸山花世は呻いた。二千部しか売れなかった絵付きの詩集。妹分も一冊だけ持っている。
 「鬼の子の詩は傑作です。私は二冊持ってます」
 男の言葉に大井弘子はちょっと笑っただけだった。
 「そういうわけで私は大井さんの力は知っています。どういう作風か、どれぐらいの能力で、どれぐらいの運のキャパを持っているか。これ以上知る必要はありません」
 「……」
 小娘は黙っている。
 「大井さんの作品はすべてがいいものです。それがどんなにご本人か調子が悪いときに作られたものであっても、です」 
 男は言い切った。そしてさらにこう続ける。 
 「私はいいものが欲しい。いいシナリオ。いいイラスト。いい曲。他人がいいものを使っているのは我慢がなりません。率直に言って非常に不快です。いいものはすべて私のもとに集まるべきです」
 「……」
 三神ははっきりと言った。そして丸山花世は呆れると言うよりもむしろ感動を覚えた。
 いいものはすべて自分の下に集まるべき。
 何の根拠も無いが、そのほうがいい。そんなことを真顔で言い切る男はめったに無い。
 ――こいつ、とんでもねー馬鹿か、天才だぞ!
 物書きヤクザはそのように思い、そして、そこで三神はさらに信じられないことを語った。
 「丸山さん。あなたのことも知ってます。あなたはシナリオでプロデューサーを病院送りにした大悪人です」
 「は?」
 物書きヤクザは彼女にしては珍しい表情を作った。相手の言葉の意味が分からなかったのだ。
 「聞きました。あなたがシナリオで、自分を雇ったプロデューサーを病院に放り込んだと」
 男はまばたきをせずに言った。
 「え? 何それ?」
 意味が分からないので小娘は首をかしげている。
 「グラップラーの三重野というプロデューサー……あの人、病院送りになったそうですが、ご存じなかったのですか?」