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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編1

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 一階のロビーを通ってエレベーターへ。目的階は四階。生意気な小娘はその間、自分が聞いた会社名であるとか人名を頭の中でさらっている。ちなみに前夜、丸山花世は自分でも会社の関係であるとか人物のことをネットでもって調べてはいたのだ。もっとも。ネットに流れているような情報であるから確度の高いものは少ないが。丸山花世の整理した情報は以下の通り。
 
 ?エターナルラブ……(エターと略されることが多い、らしい)という作品を作っていたのがキンダーガーデンという会社。
 ?キンダーガーデンは青物横丁駅のそばにあった……資本金は一億円。
 ?キンダーガーデンの子会社がFMB。これは大崎にあった。社長は市原。市原はもともとキンダーガーデンの社員だったが、独立して、キンダー作品の製作下請けとなった。
 ?で、キンダーは倒産。おととしの十月のこと。キンダー子会社FMBも倒産。キンダーの社長は権利をつけてブランセーバーに引き取られ、キンダーの社員はNRTというグループ企業傘下の音楽製作会社16CCに入った。親会社破綻で潰れたFMB市原も16CCに合流。 
 ?16CCはその際に自社の一部門としてあてつけのようにして『キンダーCC』を設立。
 ?エタースタッフは16CC内のキンダーCCで作りかけであった『エターナルラブ カーテンコール』を製作強行。一方、ブランセーバーと16CCの上層部は手打ち。キンダーCCは廃止。16CCゲームに名前を変更。
 ?16CC、ブランセーバーからエターナルラブ製作の権利を獲得。エターナルラブ6の製作を開始。
 
 時系列で話を追うと……以上のようなところか。
 かなり複雑な話で権利やら人物関係が入り組んでいる。そして……たいていの場合はそうなのだが、いいものはすっきりしていて美しい。ごてごてとしているものは醜い。作品も同じで、成り立ちがすっきりしているものは美しく、そうでないものは醜い。
 ――こいつはちょっとどころか、相当危ないよなー。
 丸山花世は嫌な予感をすでに感じているのだ。
 醜い作品は……売れない。売れるわけがないのだ。
 「花世、こっちよ……」
 エレベーターの向こう。アネキ分はそのようにして誘い、丸山花世はそれに応じる。
 エレベータを降りたすぐのところは小さなエントランス。
 ――ブランセーバー。