美奈子
みなこのお父さんに一度、会ったことがある
美奈子よりもお金が好きそうだった。
変にあごを前に突き出して、笑っていた。
「こいつは本当にブスだな」と美奈子にいって
美奈子はけんのある目をして、
お父さんの後ろにしたがう
お母さんをかばうように
お父さんの前にたっていた。
「あそこをいくこのほうがかわいいね
おまえはほんとうに おやににて みにくいな」
お母さんは、美奈子に、かばわれているのに
「おやににて」といわれているのに
お父さんと一緒になって
「ほんとうにね、このこはみにくい」と
笑った
息が詰まった。
逃げて、私はこの喫茶店で、
彼らの笑い声、実に明るいほがらかな
じゃあくな笑い声が立ち去るまで
すべてが終わるまで、下を向いて、
注文を選んでいるふりをした。
それ以来、この喫茶店を避けて歩いた。
美奈子が選ぶ男は
みな、なぜか、あの父親――あるいは、母親に似ていた
認めてくれなかった 親を見返すように
美奈子は、親ににた人を
あいしつづけていた