美奈子
ぼろぼろと、声もなく泣き出した美奈子に
あの頃と同じように下を向いて、私は
何を言っていいか分からなくて、迷っている
息が詰まって
つい、口走った
「海に行こう」
「うみなんかないわよ」
ヒステリックに美奈子が叫んだ
「1時間もいけばあるわよ」
「どこによ」
「どっかによ」
そういったら、美奈子が笑った
もおおお、といいながら、笑った
くやしいよお さみしいよお いたいよおおお
それで、ふたりで、笑った
ひりひりした、でも
痛いけど、かなしいけど、本当に、心から笑ったんだ
:
かみさま
私を愛さない人を
愛する必要があるんでしょうか
知らなければならない鬼の顔は
鬼の顔をした
孤独な子どもの顔です