小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

美奈子

INDEX|2ページ/5ページ|

次のページ前のページ
 


美奈子がはじめて結婚した男は
彼女の理想を絵に描いたような男だった
彼女の理想は、つまり、お金とハンサムだった。
ハンサムはよく女の子と遊んでいた。
隠しもしなかった。
女の子と遊ぶとき、美奈子のことを
「べんりだし」と同じ声音で「必要だし」と言っていた。
「結婚したら、かわると思うんだ」
そう笑った美奈子は結婚して半年で離婚した。
理由は、私にもいわなかった。
相手の男は離婚届を出したあとに
美奈子と私の友達、理子にメールを出していた。

  だめになっちゃった笑
 これからお茶でもしませんか?

美奈子が2度目に結婚した男とは
彼が結婚してからしばらくして、
ようやく会わせてもらった。
美奈子は数年、彼と私たちを会わせなかった。

恰幅のいい、医者だということだった。
太っていて知識はあったが、粗野に見えた。
だけど美奈子は、その少しぞんざいに人を扱う男に
ぞっこんだった。
うっとうしいぐらい、
この人はね、この人はね、と
情けない顔で笑って、何度も、何度も言った。
あのねえ、私たちラブラブなの、と
この人は、と、私にいった。
半分眉が八の字になりながら。

これも1年ちょっとで、離婚した。
別れた次の日も、美奈子の右あごと
目の上には、黒いあざが残っていた。

そうして、今日
久しぶりに会った美奈子は
やつれた指を寒そうにこすりあわせて
まったく化粧をしていなかった。

なんで呼ばれたのかはよく分からなかったが、
また、男だろう、と思った。
 いつだって男なんだ。

彼女の顔にはうぶげが生えていた。
たよりない、そのしろしろの産毛に、
私はなんでかぞっとした。

「いま、男居るの?」
美奈子は躊躇して、息を呑んでから
「いる」といった。
「どんな人」
「殴んない、やさしい、でもお金とってく」
それから、壊れたような
それでもとても綺麗な顔で笑った。

作品名:美奈子 作家名:夜鷹佳世子