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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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新説御伽草子~桃ねーちゃん!

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 烈風を起こす物干し竿が鬼を薙ぎ倒していく。
 雉丸はショットガンとリボルバーの二丁拳銃で鬼に致命傷を与えていく。
 だが、鬼の数はいっこうに減ることはない。
 持久戦になりそうだが、その場合は数の多い向こうに分がある。
 さらにポチがこんなことを言う。
「魔法の温泉がある限り、いくらでも復活してくるよ!」
 桃は舌打ちをした。
「風呂の栓を抜くか、毒でも混ぜときゃよかったね」
 あの温泉がある限り、鬼どもの戦力は無限だ。
 しかし、桃たちの知らないところで好機が訪れずれていた。
 戦いを見守る温羅に鬼の一人が耳打ちをする。
「大変ですぜ姐御」
「どぉしたの?」
「温泉の湯がからっぽになっちまって」
「何そんなに慌ててるの、さっさとお湯入れたらいいじゃない?」
「それが……湯泉が何者かに破壊されて岩の下に埋まっちまって……」
 さらに追い打ちをかける出来事が起きた。
 謎の爆発が起きて鬼どもが砕けた地面と一緒に天高く吹っ飛んだ。しかも、爆発は次々と起きるではないか!?
 温羅は自分の居城を見上げて息を呑んだ。
「なっ……どうして仲間に砲撃してんのよぉ!」
 大軍の鬼を蹴散らしていたのは砲台からの攻撃だったのだ。
 桃も何事が起きたのかわからないまま城の上にある砲台を見上げた。なんと、そこには満面の笑みで手を振る猿助がいるではないか。
「姉貴ーっ、オレだってやればできるんだからな!」
「よくやったサル、ドンドンかましてやりな!」
「おう!」
 砲台を乗っ取った猿助はやりたい放題ドンドン撃ちまくった。
 温羅に耳打ちしていた鬼が猿助を指差して叫ぶ。
「あいつですぜ、温泉をぶっ壊したのはサルみてえなガキだって聞いてます!」
 砲撃によって鬼は全滅の危機に晒されてしまった。
 唇を噛んだ温羅はホウキに跨って空を飛んだ。向かうは砲台だ。
「そこのサル、今すぐやめないとヌッコロス!」
「やめねーよ!」
 強大な武器を手に入れた猿助は強気だ。
 が、猿助はなぜか悪寒を感じて身震いしてしまった。
 ホウキを降りて上空から猿助に飛びかかった温羅の手には、あのデスサイズがしっかりと握られていた。
「ウラウラウラウラァッ!」
 殺される、殺される、絶対に殺される!
 猿助は砲台を捨てて逃げた。全力疾走で逃げた。殺されないために死ぬ気で逃げた。
 そして、逃げ道を失った猿助は鳥になった。
 でも、やっぱり鳥にはなりきれなくて、両手を広げて地面にダイブ。
「死ぬーっ!」
 ボヨヨン♪
 猿助の顔面が柔らかなクッションに埋まった。顔を上げるとそこには怒ったようすの桃の顔。
「てめぇ、人様の頭に振ってきやがって!」
 猿助は桃に抱きかかえられる形で受け止められていたのだ。
 地面には激突せずに済んだが、次の瞬間グーパンチが飛んできた。
「ぐわっ!」
 鼻血ブーしながら猿助はぶっ飛んだ。でも、その表情はちょっぴり至福そう。
 砲台を奪い返した温羅だったが、地上に目をやった彼女が見た物は――仲間が誰一人立っていない惨劇。
 思わずデスサイズを手から落とし、スーッと温羅の全身から力が抜けてしまった。
「ま、まさか海上最強と謳われたあたしの海賊団が……たった三人にやれるなんて」
 だって……ここ海上じゃないもん。ちなみにポチはペット扱いなので数に入ってない。
 桃が地上から温羅に向かって叫ぶ。
「そんなところにいないで、こっちにおいで。たっぷり可愛がってやるよ!」
 温羅はうつむいたまま動かない。戦意を喪失させてしまったのだろうか?
 いや、温羅は笑っていた。
「きゃははは、下っ端を全滅させたくらいでいい気になってるんじゃないわよ。魔女っ娘海賊団はあたし以外はみ〜んな甲板掃除係なんだから!」
 温羅は顔を上げて仁王立ちした。風になびくワンピースのミニを下から見上げると……いちごパンツ。
 猿助は笑いながら温羅を指差した。
「パンツ丸見えだぞバーカ!」
 若い娘が大好きでも、少女にはまったく興味がないらしい。
「うっさいバーカ! 今すぐ痛い目を見せてやるんだからね!」
 それを見ていたポチは温羅が今から何をするか察したようだ。
「みんな逃げて、死んじゃうよぉ!」
 必死の訴えを桃は軽く受け流す。
「あんな小娘一人に何ができるっていうんだい」
 血気盛んな鬼どもが、なぜこんな少女の手下に甘んじているのだろうか?
 金や財宝の報酬か、それとも忠義忠誠か、理由はこれだ。
 温羅が魔法を唱えた。
「メテオインパクト!」
 遙かなる宇宙から真っ赤に燃えた隕石が飛来してきた。
 桃が叫ぶ。
「反則だよ!」
 次の瞬間、地面は大きく砕け飛び、衝撃と砂煙で辺りは騒然となった。
 土砂の中から桃が豪快に飛び出した。
「あの小娘ッ!」
 雉丸も土砂の中から姿を現し、その胸にはポチが抱かれかばわれていた。
「大丈夫かいポチ?」
「うん、ありがとう兄さま!」
 あと一人は――。
「だれがだずげでぐれ〜」
 土砂の中から片腕だけ飛び出していた。
 再び呪文を唱えようとしている温羅。
「メテオ、メテオ、メテオインパクト!」
 いくつもの隕石が飛来してくる。
 桃はすかさず土砂に埋まっていた猿助の腕を掴んだ。
「うぉりゃぁぁぁっ!!」
 地面から引っこ抜いて砲丸投げの要領で天高く投げた!
 猿助ロケットは一直線で温羅に向かって逝った。
 が、温羅はすぐさま特大ハンマーで猿助を打ち返した。
「ウラァーッ!」
「ギャーッ!」
 キラリーン♪
 猿助は遠い空でお星になったとさ。おしまい♪
 しかし、温羅は大きく瞳を開いて驚いた表情をした。
 眼前まで迫っていた桃の投げた物干し竿。
 次の瞬間――。
「きゃぁぁぁっ!」
 突然、悲痛な叫びをあげて温羅が顔を押さえてうずくまった。その傍らには血のついた物干し竿。
 温羅が足下をふらつかせながら逃げていく。
 桃は後を追おうと急いだ。
「てめぇら、さっさと小娘を追うんだよ!」
 でも、その前に隕石ドーン!
 桃たちは大きく吹き飛ばされて土砂降りに埋もれた。

 桃は城内を一人で走っていた。
「ったくみんなどこいったんだよ!」
 メテオインパクトの衝撃の爆発に巻き込まれて、みんなとはぐれてしまったのだ。
 すぐに砲台があった場所に来てみたが、すでに温羅の姿はどこにもない。
 桃は落ちていた物干し竿を拾い上げた。そして、石の床に残る血痕が続いていることに気づいた。おそらく温羅が逃げながら流したものだ。
 点々している血痕を頼りに温羅を追った。だが、進むほどに血痕が少なくなり、ついには手がかりがどこにもなくなってしまった。
 背後から気配がした。鬼の残党か?
 桃が振り向くとそこにいたのはポチだった。
「桃の姐御さぁん、うわぁ〜ん、独りぼっちで怖かったよぉ」
「あんた温羅の隠れそうなところに心当たりあるだろ、さっさと案内しな!」
 桃はポチの首根っこを掴んだ。
 潤んだ瞳でポチは桃を見つめている。
「あんなに怖い目に遭わされて、まだ温羅の姐御さんを退治しようとしてるんでしゅかぁ?」
「怖い……何が?」
「だって、お空からいっぱいお星様が落ちてきたのにぃ」