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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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新説御伽草子~桃ねーちゃん!

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 しかし、涼しげな酒呑童子の声が風に乗る。
「やめておけ、陽が沈む。オレ様の命も消えようか……」
「卑怯な卑怯な……酒呑童子さまが万全であればキサマなどに!」
「そういうな茨木童子。勝負は時の運、ただ運が悪かっただけのこと……これは返すぞ!」
 歯を食いしばりながら酒呑童子は物干し竿を抜き、大きく後ろによろめいた。
 勝ったというのに、桃は悔しそうに酒呑童子を睨みつけていた。
「どうして手を抜いたんだい!」
「あはははっ、妻にしたい女を傷つける奴がいるか」
 八重歯を覗かせながら酒呑童子はさらによろめき、そのまま崖に足を踏み外した。
「酒呑童子さま!」
 茨木童子が叫んだ瞬間、酒呑童子はまるで自ら身を投げたように背中から谷底に呑み込まれた。
 すぐに茨木童子も酒呑童子を追って身を投げて消えた。
 暗い暗い谷の底。
 桃は背を丸めて底を眺めたが、何も見ることはできなかった。
 軽く舌を打ち桃は天を見上げた。
「ったく後味が悪ったらありゃしないよ」
 陽は落ちた。