ペナルティ・ボックス
だが、死神はおばさんの危惧をにこやかに否定した。
「心配しなくてもいいよ。幽霊は悪霊化する恐れがあるんで、始めから禁じられてるんだ。だから君達には“寄り代”の中に入ってもらう事になる」
そう言って死神が取りだしたのは、いずれも年季が入っていそうな家具や電化製品の写真だった。
「付喪神(つくもがみ)っていう言葉、聞いたことあるよね。古い家具なんかには精霊が宿ると言うでしょ。君達にはその精霊になってもらおうと思うんだ」
おばさんは安心したようで、古い掃除機を選び、引きこもりの少年は古書を選んだ。
それらはいずれも博物館にあるしろもので、おばさんはペナソニック記念館に、少年は国立図書館に飛ばされて行った。
「俺はこれにするかなゲヒヒヒヒ・・・」
オタク青年が選んだのは、アンティック・ドールだった。
20世紀初頭に作られたフランス人形で、彼はどこかの令嬢と共に時を過ごそうと考えたようだったが、残念・・・。
飛ばされた先は人形寺の地下倉庫。
いわくつきの人形達が保管されている恐ろしい場所だったのだ。
「おや、どうしたのかな。久美子さんはまだ選べないの?」
死神が私の顔を覗きこんだ。
だが、言わせてもらえれば、ここにある写真のどれも嫌だった。
「猫とか、動物はないの?」
私はダメ元で、物以外のものはないかを尋ねてみた。すると・・・。
「ウーン、あるにはあるけど、あんまりお勧めはできないよ」
そう言いながら死神は、1枚の写真を取り出したのだった。
それはテレビでも有名なイケメン俳優の写真だった。
作品名:ペナルティ・ボックス 作家名:おやまのポンポコリン