ペナルティ・ボックス
「勿論、彼には魂があるから、なり変わる事は出来ないよ。だけど一緒にいる事はできる。それでいいなら、許可しよう」
おそらくは守護霊になれということなんだろう。
私がその提案を拒否するわけがなかった。
なぜなら生前から私は彼の大ファンだったのだ。
「これにします」
私はきっぱりと宣言した。
守護霊はいくら、彼の為に尽くしても好きになってもらう事ができない。
そのうち彼にはいい女性が現れて恋に落ちることになるだろう。
そんな時も、ただ見守っているだけ・・・。
つらくても、もう自殺はできないのだ。
だが、それでも掃除機や、古書や、人形寺の地下倉庫のフランス人形になるよりずっといい。
「ではそれでいいんだね」
死神の言葉に私はもういちど頷いた。
やがて、クラリとした感覚の後で、
私はなにか温かい場所に飛ばされた。
どうしたんだろう。何も見えない。
ただ水中の中を漂っているだけのような・・・。
不安になった私は死神に呼びかけて見た。
「守護霊って、最初はこんなものなの?」
だが、返ってきた答えは驚くべきものだった。
「自殺した人は守護霊になれないよ。君は望み通り彼の中にいる。サナダムシとなってね」
なんでも彼はスタイルを維持する為に、サナダムシを飼い続けているらしい。
サナダムシの寿命は約三年だから、私はこれから次々とサナダムシに生まれ変わって、
そこで六八年間をすごすのだそうだ。
(おしまい)
作品名:ペナルティ・ボックス 作家名:おやまのポンポコリン